【解説】“紀州のドン・ファン”殺害事件 元妻無罪判決の理由は…覚醒剤“誤摂取の可能性否定できず”
──その証言が信用できるものではないということで、無罪に至ったということですね。 そうです。別の方法としては、たとえば、覚醒剤の取引があったというところまでは立証できるから、それが(密売人が証言した)氷砂糖なのか、覚醒剤なのかは別として、ここまでは認定するというのが普通だと思うのですが、それも飛ばしてしまっているということです。 ──検察側は上級庁と協議の上、検討したいコメントしていますが、今後の展開としては、どんなことが考えられるでしょうか。 おそらく、検察の状況証拠の積み上げ立証というやり方について、大きな影響を及ぼしますから、このまま終わらせることはおそらくなくて、控訴すると思います。 ──ただ、控訴したところで検察側はこれ以上、状況証拠を積み上げることはできるのでしょうか。 おそらく追加証拠があるのではなく、この判断のやり方がおかしいというところを攻めると思います。判断過程がおかしいと。つまり、例えば、覚醒剤の取引自体を飛ばしたという事実認定の理由がおかしいなど。そこそこ状況証拠があるので、全部を合わせたら、犯人でなければ説明できない事情になりうる…というような、あくまで理屈の部分として、事実認定のやり方の問題として攻めるんだと思います。 ──証拠をこれ以上、積み上げるというよりは、これまでのロジック、考え方を変えていく闘い方をしていくのではないか、ということですね。 裁判所の判断の仕方がおかしい、という攻め方をすると思います。 ──上級審で、無罪判決が覆る可能性はあると考えますか? 可能性はあると思います。裁判員裁判で無罪になって、高裁で有罪になったという事例もあります。それは裁判員裁判の趣旨に反するのではないかという批判はあるのですが、実例はあるので可能性はあると思います。