会社がつぶれる兆しを示す目印 素人でもわかる「死相」 危ない「倒産予備軍」の見抜き方(下)
危うい企業を見分けるヒントは「数字と様子」
「自分には財務関連のスキルはない」と尻込みする人もいそうだが、「財務諸表が読めなくても、経営の実情をうかがい知る手がかりは少なくない」と、内藤氏はアドバイスする。 危うい企業を見分けるに当たって、ヒントになるのは「数字と様子」だ。「数字」は決算発表に代表される財務面のデータを指す。読み解きにはいくらか専門的なスキルが必要だ。しかも意図的な改ざんが加わると、金融機関のような専門家ですらだまされてしまう。 しかし、「様子」のほうは財務の素人でも気付きやすい。危うい企業が示しがちなパターンを知っておけば、「異変を察知するのに役立つ」(内藤氏)。
奇妙な「違和感」がリスク発見の端緒に
帝国データバンクの専門家が重んじているのは「違和感の有無」だ。「何だか以前と違う」「ちょっとイレギュラーな感じ」といった、何らかの変化に伴う感覚的な気付きといえるだろう。 例えば、電話対応で気付く点もある。電話に出た人の反応が鈍いとか、担当者が出払っていることが多い、キーパーソンと連絡がつかないなどは、「異変が起きている場合がある」(内藤氏)という。 資金繰りが苦しい様子を示す変化も電話から読み取れる。代表電話の応対が自社スタッフではなく、代行サービスに変わった場合は業務効率化だけが理由ではない可能性がある。 実際にオフィスへ足を運べば、得られる情報の精度がぐっと上がる。例えば、社員が見せるくたびれた態度や、沈んだ声のトーンなどはモチベーションの低下、空気のよどみなどをうかがわせる。 こうした変化に気付くためには、「何度もオフィスを訪ねて、比較して違いが分かるよう、観察しておくのが望ましい」(内藤氏)。観葉植物が減ったとか、フロア内の活気が下がったなどの変化は初見では感じ取りにくい。一方、廊下の明かりが切れているといった異常は初回でも分かりやすい。
社名や商号、プロジェクト名などの変更もヒントに
公開されている情報からつかめる「違和感」は少なくない。例えば、社名、商号、プロジェクト名などの変更もそうだ。成長軌道に乗っている場合は途中で混乱を招くようなネーミング変更を控えるのが一般的だ。 ダイナミックな変化としては本社移転や資本金変更などがある。固定費を減らす動きは資金繰りが苦しい事情を映す。人員整理、早期退職募集などの「人切り」あたりになってくると、あからさまに経営が揺らいでいる事情を示す。 人的資本経営が求められ、人手不足が深刻な今、人材を手放したがる企業は少ない。工場閉鎖や事業撤退はもはやビジネス規模が縮み始めた証しだ。 内部事情を知る人材の流出は不穏な事情を物語る。かねてカウンターパートだった人物の変更は割と気付きやすいポイントだ。通常の人事期ではないタイミングでの変更は本人希望での退職が疑われる。経営陣の異動、とりわけ「財務部門トップのような幹部の退職には警戒したほうがよい」(内藤氏)。