会社がつぶれる兆しを示す目印 素人でもわかる「死相」 危ない「倒産予備軍」の見抜き方(下)
成長する企業のパターンは様々だが、倒産する企業のたどる道筋はどれも割と似通っている。倒産に至る企業は似通った兆候を示しがちだ。ざっと20種ほどもあるこれらの目印は断末魔企業の「死相」とも呼べるだろう。専門知識を要する財務諸表とは違い、一般的なビジネスパーソンでも容易に気付くこができる予兆には、どんな項目があるのか。信用調査会社の帝国データバンクに、倒産の兆しを解き明かしてもらった。
増勢を強める倒産件数 「粉飾倒産」も急増中
倒産件数は増勢を強めている。帝国データバンクがまとめた、2024年度上半期(4~9月)の倒産件数は6半期連続で増加。下期も増える傾向にあり、「2013年以来11年ぶりに年間で1万件を超えそうだ」と、帝国データバンク東京支社情報統括部情報編集課の内藤修課長は見通す。 2024年度上半期の倒産件数は4990件(前年同期比19%増)に達した。上半期としては2013年度以来の5000件に迫る規模。業種別にみると、2年連続で全業種で前年同期を上回っている。つまり、どの業界で倒産が起きてもおかしくない状況だ。 倒産に至るタイプ別では「物価高倒産」が472件あり、上半期での過去最多を大幅に更新した。「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」も360件で過去最多を更新。「人手不足倒産」(163件)や「後継者難倒産」(239件)も高水準で推移している。 内藤氏が近ごろの目立った変化として挙げるのは「粉飾倒産が急増している」という点だ。不適切な会計処理の末、経営破綻に追い込まれるケースを指す。2024年の粉飾倒産は9月までで74件が判明しており、集計を始めた2016年以降では同期間(1~9月)の最多を更新した。同じようなペースで推移すれば、年間最多件数(2019年の84件)を更新するのは確実とみられる。 粉飾は社内でも事情を知る者が少なく、社外から見抜くのは難しい。2023年7月に破産手続きの開始決定を受けた堀正工業(東京・品川)のように、優良企業とみられていたが、実は20年間も金融機関を欺き続けたケースもある。 ただ、粉飾のような不祥事はいったん発覚すれば、一気に経営破綻へ進むケースが珍しくない。信用が一気に損なわれるからだ。つまり、粉飾倒産タイプの事案に巻き込まれると、債権回収や取引ネットワーク維持の面で危機に直面しがちだ。そうしたリスクを避けるには、危うい経営の実態を早めに見抜くしかない。