ブランドセーフティ の「メリット」と「デメリット」再考:デメリット編
当初の想定とは異なる方向に
「広告主の多くは、イゼベルのような人気サイトの持つパワーを活かす貴重なチャンスを逃している」と、ガムガム(GumGum)でグローバルプラットフォーム戦略/運営部門エグゼクティブバイスプレジデントを務めるアダム・シェンケル氏は主張する。 「どんなトピックに関しても、安全なコンテンツと安全でないコンテンツがかならずある。その現実を理解して行動に移す広告主、ほかのブランドが目を向けようとしないチャンスを確実にとらえるべく、精度が高くきめ細かいデータを提供できる事業者と組んで施策を打つ広告主こそ、勝者になれる」。 とはいえ、語るは易し、行うは難しだ。多額の金がからむと、関係者の不安も大きい。上場企業の場合、行動の帰結として株価に影響が及ぶ場合もある。アドテク企業は「不適切」のフラグ付きコンテンツを回避するツールを広告主に提供する一方で、パブリッシャーにもブランドセーフティのガイドラインを設定するツールを提供して収益を上げている。取引関係の複雑さはまるで、入り組んだ構造物からなる工業団地の景色のようだ。 そのせいもあって、ブランドセーフティの世界に均衡をもたらそうとする取り組みも、当初の想定とは違う方向に進みつつある。デジタルメディア安全基準団体GARM(The Global Alliance for Responsible Media)がその好例だ。もともとはブランドセーフティへの賢明な対処法をマーケターに提示すべく活動していたが、つねに期待どおりの成果を上げてきたとはいえない。実際、ご都合主義のアドテク企業がGARMの提案を「採点基準」として、定義が不明確なまま売り込んだ例があった。 ベンダーのなかにはGARMの意図をねじ曲げて、「パフォーマンス、コンテクスチュアル・ターゲティング、ブランドの安全性と適合性」を組み込んだサービスといううたい文句を掲げながら、実質的な情報提供ができなかった企業さえある。結果としてバイサイドの関係者は、商談で取り上げられているのがGARMの正式な活動か、それともアドテク企業の単なる宣伝か判断がつかず、混乱に陥った。