違いを理解した先にある内的共通性

写真:現代ビジネス

自分にピタリとくる時間感覚はあったでしょうか。それとも、もっと違う時間を生きているでしょうか。あるいは、他の人の時間感覚を知って「なるほど」と納得することがあったかもしれません。たとえば、計画性のない人は「祭の最中」を生きている人で、過去を悔やんでばかりいる人は「祭の後」を生きている人だと思えるようになると、自分とは異なる彼らの言動がいくらか理解できるようになったりします。 教師として研究者として、私はこれまでいろいろな人の話を聞いてきましたが、人によって、物事の見え方や感じ方は随分と異なるものです。今回とり上げてきた時間感覚の違いは、そのうちのひとつでした。 私は自分以外の人の物事の見え方、感じ方を知ることが好きです。時には、そんなふうに世界が見えるのかと驚きつつ、自己理解と他者理解が同時に深まっていきます。そして違いを少しずつ理解していった先には、逆説的に、人と人との内的共通性が浮かびあがってきます。 世界には私の知らない喜びがあり、私の知らない苦しみがあるけれど、嬉しかったり、苦しかったりするという部分では、自分も他者も同じなのだと思えてきます。自分の心のなかには見知らぬ他者と同じ思いがあり、遠くの誰かの心のなかには私と同じ思いがあることがわかってきます。誰もが、自分ではどうにもならない心を抱えて、一回限りの人生を生きているのです。みんな、それぞれ、がんばって生きているのです。そんなふうに思えると、少なくとも私は、他の誰かに対しても、自分自身に対しても、いくらか寛容になれるのでした。