2列目再編成の”サプライズなき”森保JはW杯アジア最終予選の前半正念場であるサウジ、豪州戦に勝てるのか?
ジッダとの時差はイングランドやポルトガルで2時間、ドイツやイタリア、フランスなどで1時間と日本との6時間に比べて小さい。移動距離も短いため、国内組からの選出は権田修一(32・清水エスパルス)と谷晃生(20・湘南ベルマーレ)のキーパー勢以外は、時差などに対処する術を知る長友、酒井、大迫の元ヨーロッパ組にとどめた。 9月はコンディション面よりも実績や序列を優先させた結果として、内容面でもオマーンに完敗したと森保監督は総括した。 その延長線上で時差も移動の負担も減り、全員がそろっての練習もわずか1回だったオマーン戦前よりは確実に増えるサウジアラビア戦では本来の力が発揮され、同じ轍は踏まないと確信しているのだろう。 先発メンバーの顔ぶれが容易にわかる陣容でも、就任以来のA代表の流れに全幅の信頼を寄せる。いい意味でこうとらえられるサウジアラビア戦は、一方で苦境に陥ったときのシステム変更を含めたプランBやプランCがないとも受け止められる。 もっと踏み込めば、大一番を前にして森保監督が腹を括ったとも考えられる。 「私自身は見ていないが、いろいろな記事が出ている状況は知人からの連絡でだいたい想像はついた。ただ、私の職として一戦一戦、常に生きるか死ぬかの覚悟を持っている」 自らへ対する批判やバッシングが、ネット上を中心に吹き荒れている状況を認識していたのだろう。中国戦後のオンライン取材で、森保監督はこんな言葉を残している。 くしくもサウジアラビア、オーストラリア両代表と同じグループBだった前回のアジア最終予選を、日本は6勝2分け2敗の勝ち点20ポイントで1位突破した。ただ、2位のサウジアラビア、3位のオーストラリアとの差はわずか1ポイントだった。 同じく10試合を戦う今回も勝ち点20がカタールワールドカップ出場権をめぐるボーダーラインになると考えれば、サウジアラビアに負けた時点で黄信号が、ジッダから長距離移動と時差を抱えて対峙するオーストラリアにも屈せば赤信号が灯る。 その意味で観客も収容される完全アウェイとはいえ、サウジアラビア戦はどんな内容でも勝ち点3が求められる。代表監督の矜恃を「一戦一戦、常に生きるか死ぬか」と語った指揮官は自身のイズムを貫き、最悪のケースとして「死ぬ」を、要は進退を問われる覚悟を秘めながら、現地時間の土曜日夜には他のスタッフとともにジッダ入りする。 (文責・藤江直人/スポーツライター)