“米国金融界の獅子”ジェイミー・ダイモンに聞く「強い企業の作り方」─不況も好況も乗りこなす、「要塞のような企業」を作るには
金融界で段違いの影響力を誇る、JPモルガン・チェースのCEOジェイミー・ダイモン。シティグループという金融コングロマリットをゼロから作り上げ、破綻寸前の銀行を救った彼はいま、大恐慌下でもビクともしない「要塞」のような金融大帝国を率いている。その卓越した経営手法から、彼が考える「世界のリスク」まで、仏誌「ル・ポワン」が余すところなく聞いた。 第二次トランプ政権に入らないことについて、ジェイミー・ダイモンのリアクションは…
新社屋が体現するもの
高級ブランドが並ぶ5番街と劇場街のブロードウェイを除くと、ニューヨークで名高い通りといえばパーク・アベニューが筆頭に挙がる。ここには富豪一族の邸宅や金融機関が集まっており、数十億ドルが瞬時に動く。 だから全米一の銀行JPモルガン・チェース(以下、JPMC)が、この通りのグランド・セントラル駅の近くに新社屋を構えたのは、当然といえば当然だった。 新社屋の高さは423メートル(エッフェル塔より123メートル高い)。私たちは落成前のこの茶色と黒の摩天楼を、一足先に覗くことができた。柵の向こう側で私たちを待ってくれていたのは、JPMCの不動産事業の統括者デービッド・アリーナだ。同社の約7000件の物件の管理をしているという。 「巨獣のようなこのビルの内臓部へようこそ。フランスのシャンゼリゼ大通りとは少し違うかもしれませんが、ここがニューヨーク最大のビジネス街の中心なのです」 幅122メートル、奥行き60メートルのエントランスは、やがてイタリアのシエナから船で運ばれてくる大理石で覆われるという。30億ドルを投じたこの事業の規模が伝わる。じつに壮大なのである。 「私どものCEOのジェイミー・ダイモンが、弊社のキーワードとなる単語を『パワー、要塞、エレガンス』といった具合に1語ずつ挙げてリストにして、それを英国人建築家のノーマン・フォスターに渡して、建物の構想を練るのに使ってもらいました」とアリーナは言う。 私たちは荷物用エレベーターに乗り込み、59階まで上がった。数ヵ月後には、ここに受付とレストランができているとのことだが、現時点では、四方から風が吹き込む打ち放しコンクリートの空間でしかない。オレンジ色のプラスチックの薄いネットの向こう側には、虚空が広がっていた。 「どうです。ここはエンパイア・ステート・ビルディングよりも高いんですよ」