卓球・カットマンは絶滅危惧種なのか? 佐藤瞳・橋本帆乃香ペアが世界の頂点へ。中国勢を連破した旋風と可能性
卓球・ワールドテーブルテニス(WTT)の年間王者を決めるWTTファイナルズ福岡で、女子卓球に新時代を告げるようなエポックメイキングな出来事が起きた。カットマンのダブルス、佐藤瞳・橋本帆乃香のペアが中国のトップ選手を連勝で破り決勝に進出。決勝戦は日本人ペア同士の対決となったが、ここでも現在売り出し中の日本の若手筆頭、大藤沙月・横井咲桜ペアを破って優勝を飾った。なぜこの攻撃卓球全盛の時代にWカットマンが頂点まで駆け上ることができたのか? (文=本島修司、写真=VCG/アフロ)
攻撃卓球全盛の時代にカットマンが頂点に立った背景
カットマンが頂点へ――。WTTファイナルズ福岡、女子ダブルスを制したのは佐藤瞳・橋本帆乃香ペアだった。 攻撃卓球全盛の時代に、この先何年も見ることができないとも言われたこの不可能を可能にした瞬間を、卓球大国の中国を含む世界中が目撃した。 そこには、パリ五輪直後という状況と、そして何より、誰よりも自分を強く律し、ひたむきに練習を重ねてきた彼女たちの人生そのものがあった。 スポーツは、オリンピックのような大きな大会になるほど多くの観客が熱狂し、選手も実力以上のものを出し切る。大会後の選手の激しい疲労や消耗の大きさは想像に難くない。また、大きな大会の後には「勝った選手たち」には「達成感」も生まれる。大会後に隙があるということではなく、どんな人間でも、全力を出し切った後に、すぐにまたすべてを振り絞って戦えというのは無理があるのだ。 逆に、勝てなかった選手、そして大きな大会の舞台に立てなかった選手は、下克上を狙ったり、ジャイアントキリングを目論んだりする期間にもなる。それがパリ五輪後の「現在」と言える。 現に中国のエース孫頴莎が大不振に陥っている。それだけではない。特にこのWTTファイナルズ福岡では波乱が続出した。「パリ五輪メダリストが全滅!」というフレーズも各媒体の見出しを飾ることになった。ケガで休養明けの早田が負けるのは仕方がないとしても、中国のレギュラークラスがシングルスで次々と負ける姿は衝撃的でもあった。