手軽で驚くほど効果的な「レジスタンス運動」とは 血圧から骨、炎症、抑うつ、不安まで改善
どんなトレーニング?
筋肉にレジスタンス(抵抗)をかけると聞くと、ダンベルやバーベルなどの器具や、チェストプレスやレッグプレスなどのマシンを使ったエクササイズをイメージする人も多いだろうが、そのほかにもさまざまなやり方がある。腕立て伏せや腹筋など自分の体重を負荷にする自重運動や、伸縮性のあるレジスタンスバンドを引っ張ることで筋肉に負荷をかける運動も、レジスタンス運動の例だ。 さらには、椅子から立ち上がったり座ったりする、階段を上る、重たい買い物袋や洗濯物が詰まったかごを運ぶなどの日常の動作も、レジスタンス運動に含まれる。 「大半の人たちは、1日中筋力トレーニングを行っているにもかかわらず、それと気づかないだけなのです」と、米国立心肺血液研究所の心血管科学部門でプログラムディレクターを務めるエリック・シロマ氏は言う。 「徐々に抵抗に適応するにつれて、筋肉は強さとレジリエンス(回復力)を高めていきます」と語るのは、米マサチューセッツ大学アマースト校生命科学研究室の運動学者アマンダ・パルチ氏だ。こうしたトレーニングは、筋肉を増やすだけでなく、「日常生活でより良く機能する強い体を作ってくれます」
心臓や血管への効果
2022年2月に学術誌「British Journal of Sports Medicine」に発表された研究では、週に30分間のレジスタンス運動をルーティンに加えるだけで、心臓の健康が大幅に改善されるなどの理由から、寿命が伸びる可能性があることが示されている。 「筋力トレーニングは、血圧とコレステロールを改善してくれるため、心臓にとてもいいのです」とパルチ氏は説明する。 レジスタンス運動は、血液の流れと循環を良くして血圧を改善し、また、炎症を抑えてコレステロールを低下させる。慢性的な炎症は、動脈内のコレステロールの蓄積につながり、血栓とも関係する。 「週に1時間未満のレジスタンス運動だけでも、心臓発作や脳卒中といった循環器疾患にかかるリスクが40~70%減ることが、私たちの研究でわかりました」と、米アイオワ州立大学人間科学部の身体活動疫学教授ダックチュル・リー氏は言う。