手軽で驚くほど効果的な「レジスタンス運動」とは 血圧から骨、炎症、抑うつ、不安まで改善
「体が硬くなる」は誤解、糖尿病にもよい
筋力トレーニングは、ほかにも体のさまざまな部分にとって有益であることが証明されている。また、一般的なイメージとは裏腹に、体のバランスと柔軟性の向上にも役立つ。 「特に高負荷のレジスタンス運動については、長い間、体を硬直させて柔軟性を奪うと考えられてきました」とマクドノー氏は言う。「しかし今では、実際はその逆であることが証明されています。レジスタンス運動は、関節の可動域の改善において、従来の静的ストレッチ(反動を使わずにゆっくりと筋肉を伸ばすストレッチ)と同じくらいの効果をもたらします」 可動範囲が広がると、バランスが改善され、転倒によるけがをしにくくなる。フレデリクソン氏によると、レジスタンス運動は、筋骨格系の損傷や、外傷で内臓が損傷するリスクも減らすという。なぜなら、発達した筋肉が、外部の力から骨や臓器を守るクッションのような役割を果たすからだ。 また、レジスタンス運動が、骨粗しょう症や慢性関節リウマチなどで影響を受ける関節や骨を強化することもわかっている。この事実は、高齢者にとって特に重要だ。加齢によって力と骨格筋量が減ると、生理学的なレジリエンスが低下するとともに、けがや病気になりやすくなることが、2019年8月に学術誌「Journal of Strength and Conditioning Research」に発表された研究で示されている。レジスタンス運動は、骨の成長を担う細胞を刺激し、この劣化に対抗する。 レジスタンス運動は「サルコペニア」に抵抗する手段ともなる。サルコペニアとは、骨格筋量が徐々に減っていく現象であり、あまり運動をしない人の場合は30~40代から始まることが多い。レジスタンス運動は、筋肉に微細な傷をつけ、筋繊維の融合や再生を促してサルコペニアを予防すると、米ワシントン大学に所属する理学療法博士モニカ・チオリーノ氏は言う。 さらには、2型糖尿病の発症リスクを下げるうえ、糖尿病の管理にも役立つ。 「筋肉は血中ブドウ糖(血糖)の最大の取り込み先であるため、筋肉を活動的に保ち、大きさを維持するのは重要なのです」と、カナダ、マックマスター大学の運動学教授スチュワート・フィリップス氏は言う。また、パルチ氏によると、レジスタンス運動は「体がよりうまくインスリンを使うのを助けるため、糖尿病の予防と管理において非常に重要」だという。 病気やけが、入院による運動不足で減った筋肉を回復させるのにも、レジスタンス運動は有効だ。「筋機能の低下は、病気や早期死亡のリスクの増大につながります」と、米ミシシッピ大学の運動科学准教授ジェレミー・レネキー氏は言う。 レジスタンス運動は、代謝を向上させ、筋肉を増やすため、体重管理にも役立つ。筋肉組織は安静にしている時でさえ、脂肪組織の2倍以上のカロリーを消費するのだ。