【簿記の基礎知識】どうやって記入すればいい?具体例で簡単に理解できる「仕訳」と「総勘定元帳」【公認会計士が解説】
取引が発生したときは、借方と貸方の要素に分けて、どの勘定科目にいくら記録するか決めます。この手続きを「仕訳」といいます。また、すべての取引を勘定科目ごとに記録する帳簿を「総勘定元帳」と呼びます。今回は混乱しやすい「仕訳」と「総勘定元帳」それぞれの役割~書き方まで、税理士・公認会計士の岸田康雄氏がやさしく解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
取引と勘定記入
◆取引とは 企業の資産・負債・資本に増減が生じることを、簿記では「取引」といいます。たとえば、商品の仕入や売上、備品や車両運搬具の購入、金融機関からのお金の借入れなどは、資産・負債・資本に増減が生じるので、簿記における「取引」となります。 また、商品などの盗難や紛失、火災による建物などの焼失は、商品・建物などの資産の減少になるので、これらも取引だということができます。 勘定と勘定科目 企業の資産・負債・資本は、日々の経営活動によって増減します。そこで、勘定ごとに分けて、資産・負債・資本の増減額、収益・費用の発生額を記録します。勘定の形式には、標準式と残高式の2つがありますが、簿記3級の学習上は、標準式を簡略にしたT字フォームが用いられます[図表1]。 例えば、現金の増減額を記録して計算する勘定は、現金勘定と呼びます。項目名が付けられた勘定のことを勘定科目といいます[図表2]。 勘定の記入法 資産は貸借対照表の借方に記入するので、資産の勘定は、増加額を借方に、減少額を貸方に記入します。反対に、負債および資本は、貸借対照表の貸方に記入するので、負債および資本の勘定は、増加額を貸方に、減少額を借方に記入します[図表3]。 収益は損益計算書の貸方に記入するので、収益の勘定は、発生額を貸方に記入します。反対に、費用は損益計算書の借方に記入するので、費用の勘定は、発生額を借方に記入します[図表4]。 例えば、次の取引を勘定に記入してみましょう。現金勘定には、4月1日の時点で1,000,000円が繰り越されてきていたとします。 4月4日、事務用の複写機400,000円を買い入れ、代金は現金で支払いました。 4月9日、商品600,000円を仕入れ、代金は掛けとしました。 4月16日、商品を780,000円で売り渡し、代金は現金で受け取りました。 4月19日、買掛金のうち500,000円を現金で支払いました。 4月22日、商品売買の仲介手数料9,000円を現金で受け取りました。 4月25日、3月分の従業員給料130,000円を現金で支払いました。 4月30日、銀行から200,000円を借り入れました。 ※[図表5]~[図表12] すべての取引は、資産の増加および減少、負債の増加および減少、資本の増加および減少と、収益の発生、費用の発生という8個の動きのうち、いくつかの動きがお互いに結びついて成り立っています。これらの動きは、借方と貸方に分けられ、借方の動きと貸方の動きとが、それぞれ1個以上が結びついて1つの取引となります[図表13]。 例えば、事務用の複写機500,000円を買い入れ、代金は現金で支払ったという取引を見れば、借方の資産の増加と、貸方の資産の減少が結びついていることがわかります。 商品400,000円を仕入れ、代金のうち100,000円は現金で支払い、残額は掛けとした取引について見ますと、資産の増加には、資産の減少だけでなく、負債の増加が結びついていることがわかります。 従業員給料120,000円を現金で支払った取引について見ますと、費用の発生と、資産の減少が結びついていることがわかります。 商品売買の仲介を行い、手数料80,000円を現金で受け取った取引について見ますと、資産の増加と、収益の発生が結びついていることがわかります。 いずれの取引においても、借方に記入された金額の合計額と貸方に記入された金額の合計額は等しくなります。したがって、すべての勘定の借方の合計金額と、貸方の合計金額も等しくなります。これを「貸借平均の原理」といいます。