史上2チーム目の売上100億越えを達成した 浦和レッズ 。ビッグクラブを支えるのはサポーターに寄り添うマーケティング
新規来場者と既存サポーターへの心配りのバランス
もちろん、新規来場者ばかりを見ているわけではないという。というのも、浦和レッズのシーズンチケット申し込みは2024年、2万席を越えており、他クラブと比べても驚異的な数字を記録している。つまり、スタジアムに足を確実に運んでくれる既存サポーターが非常に多いのだ。そうしたなかで、「新規来場者ばかりに目を向けるのではなく、まずはずっと応援してくれているサポーターの方々の気持ちから考えていこうとスタッフ同士で常に声を掛け合っている」と、星野氏はクラブスタッフの意識を教えてくれた。 シーズンチケット購入者には小中高生もいるようで、「ゴーゴーレッズデー」の際には不公平感が出ないよう、オリジナルのハンドタオルなどをプレゼントしている。「正規料金で購入してくれた方にしっかりと向き合い、追加のプレゼントを必ず用意している。こうした意識がセットでなければ、新規来場者獲得のキャンペーン施策に踏み出すべきではない」と星野氏は言い、「既存のサポーターと新規来場者、どちらかを重要視するようなことは絶対にない」と断言する。 シーズンチケットの更新率は毎年95%以上と高水準で推移しており、新規の購入者も毎年4桁水準でいることから、トータルのシーズンチケットホルダーは微増が続いているようだ。 星野氏いわく、新規来場者と既存サポーターへの心配りのバランスを間違えないことが重要だという。
良い感情を共有しあう先にあるロイヤルティの向上
一方で、グッズ収入についてはどうだろうか? 入場者数の増加に比例して売上が上がることはもちろんだが、ここでも、サポーターの態度変容を意識し、戦略的に売上を上げているという。たとえば、試合に勝利したら販売する特別な商品などを用意し、サポーターの熱量が上がったモーメントを逃さない取り組みをしているようだ。 ただ、「勝利時の熱量を活かして売上を上げたいという思惑ばかりがあるわけではない。試合に勝利したという嬉しい気持ちを共有したいという想いがベースとなってグッズを販売している。良い感情をチームとサポーターで共有しあう積み重ねの先に、ロイヤルティの向上があるのではないか」と、星野氏は分析する。 グッズ収入はこれまで、入場料収入の3分の1程度だったというが、直近は3分の2ほどまでに勢いを増し、2023年は過去最高の売上を更新した。 グッズ収入の大きな柱はユニフォームであり、こちらもただ販売するだけではない。たとえば、ユニフォームのデザインに込められた想いをサポーターに共有するため、専用の動画を制作し、Web上に公開している。 「ユニフォーム自体の期待感などを伝えていくことにもリソースを割いたことは、過去と比べると大きく変わったことだ」と星野氏は言い、「クラブの哲学や熱量などを表したユニフォームを背負って選手たちがプレーするのであれば、サポーター自身もそれを身に着けたいと思ってくれるはず」と、情緒的な価値の訴求を大事にしている旨も話した。