父に続き母も他界。遺言書に「遺産1200万円はすべて長男に」と書かれていたけれど、ほかの兄弟にもいくらか払う必要はある? 3人兄弟の「長男」のケースを解説
親が亡くなると、悲しみに暮れる間もなく、葬儀などに加え、荷物や遺品の整理など、残された遺族は何かと慌ただしいものです。さらに親が多くの財産を残していた場合は、遺産の取り扱いも遺族間で解決しなければならない大きなテーマになります。 親が遺言書を残していれば、遺族間で揉めることもないと考えがちですが、実は遺言書どおりに遺産を相続できない場合もあり、トラブルに発展するケースがあります。 ▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる? 本記事では、遺言書どおりに遺産を分割できないケースやその理由を解説します。1200万円の遺産全額を遺言書により受け取った3人兄弟の長男を例に挙げながら紹介しますので、参考にしてください。
遺言書どおりに遺産を相続できないケースとは?
相続財産の分割について、故人の意思が示されている遺言書が作成されていれば、遺族は原則として遺言書に従わなければなりません。しかし、有効な遺言書であっても、場合によっては、それ以上に優先される相続人の権利があります。それが「遺留分」と呼ばれる権利です。 遺留分は相続人の最低限の権利として保証されており、遺言書の内容が相続人の遺留分を下回っていれば、相続人は遺留分を侵害しているほかの相続人に対し、遺留分を請求できます。 ほかにも遺言書と異なる遺産分割の手法に「遺産分割協議書」の作成がありますが、遺産分割協議書が相続人全員の合意で成立するのに対し、遺留分は相続人単独で請求可能です。 一見、故人の意向である遺言書を優先していいように感じますが、故人に近い遺族の立場に立てば、必ずしもそうではありません。例えば、もし遺言書が「友人に全て相続する」といった内容なら、故人の配偶者や子どもは到底納得できないかもしれません。そのため、遺留分は故人と関係が近い遺族に対してのみ、最低限の権利として保証されているのです。
遺留分は誰がどれくらい請求できる
遺留分の請求について、具体的にどの相続人がどういった割合で請求できるのでしょうか? まず、遺留分が保証されているのは、相続人の中でも「配偶者、子ども、直系尊属(父母など)」に限定され、兄弟姉妹には権利がありません。 また、請求可能な遺留分は、故人の配偶者や子どもであれば法定相続分の2分の1、両親など直系尊属のみであれば法定相続分の3分の1です。法定相続分とは、相続人が複数存在する場合の相続の割合を示したもので、民法で定められており、遺言書がない場合などは遺産分割の基準となります。 そこで相続人のパターンから法定相続分と遺留分、さらには1200万円の相続財産に対し、遺留分として請求可能な相続財産を示したものが図表1です。 図表1