顔と目と舌の写真だけで「体の年齢」と「老化度」を判定、病気のリスクまでわかるAIを開発
採血や検査せずに慢性疾患の発症リスクを評価、しかも「他の老化時計より正確」
中国の研究者が、個人の顔と舌と網膜の画像を人工知能(AI)を使って分析し、「生物学的年齢」を判定するツールを開発した。この技術は、私たちの細胞や組織、臓器の健康状態や慢性疾患のリスクについて教えてくれるという。論文は1月8日付けで学術誌「PNAS」に発表された。 判定画像:老化の度合いはやはり顔に表れる ある人の実年齢(暦年齢)は、運転免許証をちらっと見れば知ることができる。これに対して、生物学的年齢を知るのは難しい。実年齢とは違い、広く合意された測定方法がないからだ。また、生物学的年齢は環境や生活様式や遺伝の影響を受ける可能性がある。例えば、喫煙者は実年齢より何歳も老けて見えることがあるし、フィットネスに熱中している人は実年齢よりはるかに若く見えることがある。 これら2つの年齢の差は、見た目だけの問題ではない。生物学的年齢が実年齢よりも高い人は、慢性疾患があったり、平均よりも早く認知機能が低下したりしているかもしれない。逆に、生物学的年齢が実年齢よりも若い人は、同じ実年齢の人よりも元気に満ちあふれているかもしれない。 「生物学的年齢を知ることは重要です。実年齢よりも高かった場合には、生活習慣を変えて健康状態を改善することができるからです」と米スタンフォード大学の遺伝学者であるマイケル・スナイダー氏は言う。 一般に、生物学的年齢を測定するモデルは「老化時計」と呼ばれる。初期の老化時計は、遺伝子の働きを抑制する「DNAメチル化」のパターンをさまざまな組織で調べることで、生物学的年齢を見積もっていた。別の老化時計では、健康診断で検査する血糖値などの代謝マーカーや炎症性タンパク質マーカーの量を測定していた。 さらに最近では、顔の3D画像、脳スキャン画像、血液中のタンパク質濃度などを使って生物学的年齢を測定する老化時計も開発されている。 これらはいずれも、皮膚に刻まれたしわや加齢に関連する疾患(例えば糖尿病)のリスクなど、年齢とともに変化するものに注目している。しかし、老化は複雑なプロセスであり、複数の臓器系に無数の影響を及ぼす。 今回発表された論文の著者の一人で、中国、マカオ科技大学の医師で科学者である張康(チャン・カン)氏は、1つの測定値のみから生物学的年齢を判定しようとするのは不可能だと言う。 そこで張氏らは、顔、舌、網膜の画像から相応の年齢を判定するAIモデルを使って、生物学的年齢の「全体像」を捉えようとした。張氏は、このような手法は、「膨大な量のデータを調べ、目に見えないつながりを発見しているため、人間よりも厳密に生物学的年齢を判定することができます」と話す。