顔と目と舌の写真だけで「体の年齢」と「老化度」を判定、病気のリスクまでわかるAIを開発
顔、舌、網膜で老化を多面的に捉える
生物学的年齢の判定ツールを作成するため、研究チームは中国北部の健康な(生物学的年齢と実年齢が同じ程度だろうと想定される)1万1223人の顔、舌、網膜の画像を使ってモデルを訓練した。 「私たちの老化時計が健康的な人について予測する実年齢は、単一の測定値を使う他の老化時計よりも正確です」と張氏は言う。 なぜなら、顔と舌と網膜の画像に含まれる情報は、老化を多面的に捉えているからだ。顔のしわは、日焼けや汚染などの環境要因を反映している。中枢神経系の一部である網膜の薄さや血管の損傷は、脳や循環器系の健康状態を反映している。舌の形や舌苔(ぜったい)は、細菌叢(そう)や腸の健康状態を知る手がかりとなる。今回の研究の一環として、参加者は5年間、血液検査や尿検査、生活習慣に関するアンケート、診察などによる定期的な健康診断を受けた。 研究チームは、中国北部の糖尿病や心臓病などの慢性疾患を持つ人々と、中国南部の別の地域の人々(健康な人も慢性疾患を持つ人も含まれる)を対象に、自分たちの老化時計をテストした。 予想通り、健康な人の生物学的年齢を出してみると、実年齢とほぼ一致していた。しかし、喫煙や座りっぱなしの生活などの不健康な生活習慣がある人や慢性疾患を持つ人の生物学的年齢は、実年齢よりも高くなる傾向があった。「AgeDiff」と呼ばれる2つの年齢の差は、慢性の心臓病がある人では平均3.16歳、喫煙者では平均5.43歳だった。
実年齢との差が示すものとは
生物学的年齢が実年齢よりも高いことが、慢性の心臓病や腎臓病、心血管疾患、糖尿病、高血圧、脳卒中という6つの一般的な加齢関連疾患の発症リスクにどのように影響するかを調べるため、研究チームは参加者をAgeDiffの高い人から低い人まで4つのグループに分けた。すると、AgeDiffが高い人ほど、いずれかの慢性疾患を発症するリスクが高かった。 張氏は、AgeDiffによって、一生のうちにかかるリスクだけでなく、いつ発症するか(例えば糖尿病になるとして、その時期は今年なのか5年後なのか)も予測できるようにしたいと考えている。その時期がわかれば、実際に予防策を考える上で大いに役に立つからだ。 研究チームは、AgeDiffによる発症時期の予測は、血糖値やBMI、コレステロール値といった従来の指標による予測よりも優れていることを明らかにした。また、AgeDiffとこれらの指標を組み合わせると、より正確に予測することができた。意外ではないかもしれないが、BMIや血圧などの健康指標の異常値が、AgeDiffの高さと関連していることもわかった。