古江彩佳は五輪代表を逃すたびに逞しく、強くなってきた 永久シードプロが語る彼女のゴルフの真髄
この18番ホールでのセカンドショットのチャレンジといい、あのイーグルパットの集中力といい、そこに古江さんのなかで"何か"あったな、という感じを受けました」 古江に"何か"あったとしたら、パリ五輪の代表権に届かなかったことへの思いだろう。 森口プロが先に触れたように、今季は調子がよかった。しかしながら、五輪代表が確定する全米女子プロまでに一度も勝つことができなかった。結果、わずか0.38ポイント差で代表の座を逃がした。 今季の古江は、全米女子プロ終了時点でトップ10入りが8試合。ひとつでも勝っていれば、代表入りは確定していたはずだ。"勝てる時に勝っておけば......"古江自身、そのことはよくわかっていたに違いない。それゆえ、自らのミスを自覚し、パリ五輪での代表落選時には"魂が抜けたような状態"にはならなかった。 そして、オリンピックが終わった今、古江は"ここ"というチャンスを逃さない選手になった。 「エビアンの開催コースは丘陵地に造られたゴルフ場で、フェアウェーに傾斜のあるテクニカルなホールが多く、ただ飛ぶだけでもダメ、正確さだけでもダメ、という我慢強さが求められるんですよね。そういう意味では、日本人向きであり、粘り強い古江さんが得意とするコース。だから、東京五輪代表になれなかったあと、自らの再生の意味でもエビアン出場を選択したことは大正解だと思っていました。 あれから3年後の今回、再び五輪代表争いに敗れたあと、古江さんがどういうチャレンジをするのか、注目していました。代表争いの期間ではそれを意識しすぎて優勝できませんでしたが、今年のエビアンではその争いから解き放たれたというか、(五輪代表争いの最中には)できなかった優勝を狙いにいくというか、そういう気持ちがあったんじゃないかと思うんですよね。 それが、最後の『絶対に入れよう』と思って決めたイーグルパットに表われていたように思います」(森口プロ) パリ五輪代表争いでは、全米女子オープンで優勝した笹生優花、全米女子プロで2位タイとなった山下美夢有が、当初ランキング上位にいた古江を抜いて代表入りを果たした。古江にしてみれば、"メジャーで受けた傷は、メジャーでしか返せない"と思ったかもしれない。 勝利を決めたあと、「フランスのメジャーで勝てて、(パリ五輪に出場できなかった悔しい)気持ちを晴らせたかなと思います」とコメントした古江。3年前と同じく、五輪代表を逃した悔しさを抱えながら挑んだアムンディ エビアン選手権での奮闘によって、彼女はまたひと回り成長し、逞しくなった。 アムンディ エビアン選手権後に出場したスコットランド女子オープン(8月15日~18日/スコットランド)でも、古江は3位タイと健闘した。となれば、今季最後のメジャー、AIG女子オープン(全英女子オープン/8月22日~25日/スコットランド)においても、古江のプレーぶりから目が離せない。
古屋雅章●取材・構成 text by Furuya Masaaki