【アジアカップ直前インタビュー】「もう、勝つしかない」“8年越しの雪辱”へ、吉川智貴の所信表明|フットサル日本代表
5年後のW杯、国歌斉唱で堪えた涙
──2016年の敗退から気持ちを整理するにはどれくらい時間がかかりましたか? かなりかかりましたね。考えたくないと思って、考えることをやめて逃げてしまう日もありました。なかなか、「よし、やってやるぞ」とはならなかったですね。 正直、僕は代表に呼ばれる資格もないと思っていましたし、この先、呼ばれなくてもおかしくないと思っていました。とにかく自分に今できることを、100%でやり続けるしかないと思っていたので、次のW杯とか、次の代表活動とかは全く考えていなかった。 ──そこからまた、同じように敗戦の悔しさを味わったメンバーが代表に呼ばれて、顔を合わせたと思います。次の大会を目指していくために、その時はどんな話をしたんですか? 次の監督がブルーノ・ガルシアになって、僕はヨーロッパの遠征の時に初めて招集されました。久しぶりに会う選手もいて、選手間でも2016年に敗退した話もしましたし、ブルーノからも「同じ過ちを繰り返してはいけない」と直接、言われました。呼ばれたからには、もう1回みんなでまとまって、次の目標に向かっていこうという感じでしたね。 ──2020年のアジアカップはコロナ禍で中止となり、翌年に延期となったW杯は、予選なしで出場することになりました。吉川選手にとってどんな大会になりましたか? グループステージ初戦のアンゴラ戦の国家斉唱の時は、正直ほんとに泣いてしまいそうなぐらい、いろんなものが込み上げてきました。ツラかったことばかりが思い出されて試合前から泣きそうになったんですけど、頑張ってきて良かったというのと、ここからやってやるぞという気持ちにもなりました。今までの悔しさをそこでもう一度思い出して、複雑でしたけど、あの舞台に立てたことは素直にうれしかったですね。
十字架は自分だけが背負えばいい
──今回は2016年ぶりに、W杯予選を兼ねたアジアカップです。2022年の前回大会で優勝して連覇へのプレッシャーもあるなかでの戦いになりますね。 2016年の負けを取り返せる、こんなチャンスは二度とないと思っています。そこにいたメンバーの思いも背負って、その時の悔しい思いを晴らしたいと思います。 ──2016年のことについて、選手や木暮監督と話すことはありますか? 選手とは話さないですね。なにも知らない世代の選手が多いですし、気にする必要はないですから。当時いた自分が、その十字架を背負ってやればいいだけ。チームとしては、特になにも気にせず、2年前のようにのびのびやるだけなんじゃないかなと思います。 グレさんとも、2016年のことは、この合宿では話していません。次の大会はW杯予選を兼ねているという話の流れで、2016年に敗れた話題をみんなに伝えたことは過去にありましたけど、2人でその話をすることはありません。 ──ミゲル、ブルーノ、そして木暮監督とそれぞれスタイルが異なる指揮官です。代表チームの雰囲気も変わってきているのでしょうか。 変わってはいますけど、それは自分が年齢を重ねたことによって見えているものが違うからなのかもしれませんね。今のチームは、よりエネルギーに満ちていると感じます。 ──木暮監督と積み重ねてきたことで、実を結び始めていると感じる部分はありますか? これほどまで強豪国と試合をする機会はありませんでした。グレさんになってからたくさん強い国と試合をして、しかもいい内容が出るようになりました。必ずしも結果に結びついていないですけど、いい内容で戦えていることはみんなの自信にもなっていると思います。 今までは、強豪国にいいゲームをすることが難しかったところから、今はどの国が相手でもある程度いいゲームをできる。そこは大きく変わった部分だと感じています。 ──最後に、今回はどんなアジアカップにしたいですか? どんな大会にしたいとかは、もうあんまりないですね(笑)。とにかくW杯の出場権を、まずは取りたい。その後、優勝を目指します。1試合1試合、勝ち点3を積み上げていくだけかなと思っています。もう、勝つしかないので。