フランク・ロイド・ライト唯一の高層ビルが売りに。所有者はライト設計の家具を協定に反して売却
オクラホマ州バートルズビルにあるプライス・タワーは、フランク・ロイド・ライトが設計した唯一のスカイスクレーパーとして知られている。今から1年半前にブロックチェーン上のセキュリティソフトを提供するコッパー・ツリー・グループが購入したが、Artnet Newsが報じたところでは、財務不始末や法廷闘争により売却されることが決まったという。 アンセムとシンシア・ブランチャードが率いるカッパー・ツリー・グループは購入当初、「建築物を責任もって管理する」べく、プライス・タワーに1000万ドル(約14億5700万円)投資することを公表していた。その際にシンシアは、バートルズビル・エグザミナー・エンタープライズ紙に対して「この高層ビルは、アメリカ中西部にテック産業とその巨額の資金をもたらすには必要不可欠な存在」と語っていた。彼女はまた、「シリコン牧場」と題し、ブティックホテルや高級レストラン、芸術団体、出版社をテナントとして誘致したが、8月末までに退去することが決まった。 8月中旬にオクラホマ州タルサのラジオ局で放送されたインタビューにおいて、シンシアは、このビルを売却することを正式に認めただけでなく、予定より数カ月早く売りに出すことになったと語っている。彼女は、「計画の詰めが甘く、不勉強でした」と述べている。 ブランチャード夫妻が運営するセキュリティ企業、ヘラソフトは、債務超過に陥ったことで従業員への給与不払いが発覚しただけでなく、従業員のうち3人には給与の代わりにプライスタワーの株式で妥協するよう圧力をかけていたことも明るみに出てた。 夫妻がプライス・タワーを購入した際、このビルには60万ドル(約8740万円)の負債があり、それを差し引くと彼らはたったの10ドル(約1500円)でビルを入手した計算になる。しかし、その後の1年半で夫妻は200万ドル(約3億円)に膨れ上がった。 さらに夫妻は、ライトがこの建物のために特別に設計した家具を保存協定を破って売却したことが明らかになっている。これに対しフランク・ロイド・ライト・ビル・コンサーバンシーは現在、この建築物を保護するための法的措置を模索しているという。(翻訳:編集部)
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