女性だけ前のめりでいいのか?「卵子凍結」ブームの裏で置き去りにされた男性の不妊問題
一般には、「男性も30代半ば~40代になると、精子の質が低下したり、射精時の精子の数が減ったりするためではないか」と見られているようです。 ● 不妊症は「48%は男性側に原因」? 「不妊は女性のせい」ではない また、WHO(世界保健機関)も、不妊症について「48%は、男性側に原因がある(男性のみ24%+男女両方24%)」と明言しているほか、日本を含む各国の研究で、子どもの精神発達障害に「母親より父親の加齢」が大きく関与する可能性などが報告されています(22年 日本経済新聞、10月5日掲載ほか)。ただ、こうした可能性は卵子の問題ほど、情報共有されていないはずです。 そんななか、21年、日本でも獨協医科大学が、第三者の精子を保存する「精子バンク」を初めて立ち上げましたが、23年3月、早々に活動を停止することになりました。生まれる子どもの「出自を知る権利」ほか、法整備が進まないことが原因だといいます(「NHKニュースWEB」6月7日掲載)。 このほか、精子については、現時点で真偽のはっきりしない不確実な情報が溢れているほか、男性自身がその劣化に無関心であるケースも多いと言われます。
若いうちから「もし将来、子を授からなかったら」と前のめりになるのは、圧倒的に女性でしょう。このままいけば、女性主導で卵子凍結の市場だけが急拡大し、「若いうちから女性のほうが準備すべき」や「不妊は女性のせい」といった社会通念が、広がってしまうのではないかと懸念されます。 また、既に一部の女性は、SNSや海外の精子バンクで精子提供者を探しているようです。22年10月現在、世界最大とされる精子バンク企業(クリオス・インターナショナル/本社デンマーク)を通じて精子提供を受けた日本の利用者は、3年半で500人を超えたといいます(23年 共同通信、1月29日配信)。 このまま真偽が不確かな情報や、前のめりになり過ぎる女性を放ったらかしにしたままでは、様々な弊害が生じてしまうでしょう。いまこそ社会全体として、男女共に、キチンとしたエビデンスを基にした正確な情報を共有すべきではないでしょうか。 提言:不妊原因の半分は男性にも。エビデンスを基に、正しい情報共有を
牛窪 恵