女性だけ前のめりでいいのか?「卵子凍結」ブームの裏で置き去りにされた男性の不妊問題
このとき、4人全員が「彼氏ナシ」で、21~22歳でした。私は「若いのに、なぜそんなことを」と、つい顔をしかめましたが、口火を切った彼女が、明るく「初回の採卵とかトータルで、30万円かからなかった」「結婚後に不妊治療を受けるより、コスパいいでしょ」などと笑顔で話すのを見て、「ある意味で、賢いな」と思うようになったのです。 もちろん、一部の誤った情報に踊らされて、「早く卵子凍結しないと」と、やみくもに焦るのは間違いです。半面、令和の共働き夫婦は「結婚すれば、そのうち自然に妊娠できる」時代ではなくなりました。 10年ほど前から、取材でも(産休・育休に備え)「上司に『そろそろ子作りしてもいいですか』と相談する」といった男女が増えたほか、結婚後に排卵日を夫婦でシェアして、「今日は(排卵日だから、お酒を)飲んで帰ったら、コロス」とメッセージを送る妻や、「僕はどうせ種馬だから」と失笑する夫たちが、身近になっていたのです。
そんな先輩を見て、20代の女性たちが「いまから備えておかないと大変だ」と不安に襲われるのも当然でしょう。19年にある女性向けメディアが、読者(20~30代女性中心)に行なった調査でも、「卵子凍結に興味がある」が7割弱、「卵子凍結をしたい」が6割弱にのぼりました(「日経doors」日経BP、11月22日掲載)。 ● 卵子凍結についての議論を 深めたい2つの理由 現在、日本産科婦人科学会が「未婚女性」も含めて公に推奨しているのは、おもにガン患者らの不妊を防ぐための卵子凍結に限られます。22年、政府が公的助成対象とした精子・卵子の採取や凍結保存も、やはり未婚ではガン治療を控えた人たちが対象です(一部、実施主体の都道府県により異なる)。 一方で、東京都は23年、健康な女性の卵子凍結について、助成制度を作るための調査に乗り出しました(「NHK 首都圏ナビ」2月3日掲載)。現状を鑑みると、そろそろ国や産科婦人科学会も、健康な未婚女性も視野に入れ、現実的な議論をすべきではないでしょうか。 提言:健康な未婚女性も対象に、国として現実的な卵子凍結の議論を始めよ