竹刀で子どもを叩き続けるのは「愛のムチ」なのか…スポーツが「暴力の温床」になってしまう根本原因
■価値観を昭和から令和にアップデート アンラーン(Unlearn)という言葉をご存じだろうか。過去に学んだ知識や価値観を一度解体し、新しい知識や方法論を取り入れようとする考え方だ。 「叩かれて強くなる」という昭和的な教育観を持つ世代にとっては、過去の経験が「絶対的な成功法則」と誤解されることが多い。しかし、その考えが時代遅れであることを自覚し、新たな価値観に適応する必要がある。 ただ、昔の知識や価値観を単に「間違い」と否定するのではなく、それを活かしつつもアップデートして新しい学びを得る「学びほぐし」をすることが重要だ。 例えば関東でも強豪の戸塚道場の槌田和博代表は「価値観のアップデート」の重要性を繰り返し強調し、ブログやSNSでも定期的に発信。子どもとのコミュニケーションにアサーション(相手を尊重しつつ自分の意見を主張する)の手法を推奨することもある。 大阪体育大学剣道部では土屋教授が中心となって「人間力養成セミナー」を開催し、学生と一緒にスポハラ根絶のための勉強会を行っている。「気合を入れるためのビンタ」「打ち抜けを早くするためにお尻を叩く」などを材料に、なぜ剣道指導ではそのようなことが行われるようになったのか、メリット・デメリットを考え、スポハラにつながる可能性があれば、代替案はないか学年を超えて話し合う。スポハラの根絶だけではなく、剣士として人間力を高め、ともにグッドコーチを目指すことをねらいとしているという。 ■当事者だからこそ、波風を恐れず相談を スポハラを目撃したものの、報復を恐れて誰にも相談できずに抱え込む人も少なくない。単に通報をして解決するかというと、そこまで問題は単純ではないからだ。 特に当事者である人たちは、学校・地域での人間関係に影響を及ぼす大きなリスクがある。「○○が通報したのでは?」と疑いをかけられ、犯人探しが始まる。幼稚な意地悪をされることもあるようだ。自分だけならまだしも、子どもに矛先が向くことを考えると行動は難しい。 それでもなお、日本スポーツ協会の相談窓口など、匿名性を担保してもらった上で話を聞いてもらうことをおすすめしたい。話を聞いてもらうことで、解決の糸口が生まれるかもしれない。