誰がなぜ?北陸新幹線「米原ルート」再燃の震源地 小浜・京都ルート2025年度末着工は課題山積
このように開発の方向性が大きく分かれた2つのシステムを統合するのは困難だというのが国交省の考え方である。馬場・前原両氏の提言では「財政支援による運転保安投資を行えば直通運転が可能になる」と楽観的だが、過去に銀行のシステム統合でトラブルが何度も起きたことを見ればそんな単純な話ではないように思われる。 ■2025年度に着工できるのか 小浜・京都ルートの着工に向けた動きが進むにつれ、米原ルートを求める動きは沈静化すると思われる。しかし、着工が問題なく認められる保証はない。進行中の環境影響評価手続きの過程で、環境対策などが指摘される可能性があるし、着工5条件の1つに数えられている並行在来線もクリアすべき課題である。
整備新幹線が開業すると、これと並行する形で運行する在来線から新幹線に乗客が流れ、並行在来線の経営がJRにとって重い負担となるため、沿線自治体の合意を前提に並行在来線を経営分離することがある。その場合、沿線自治体や民間が第三セクターの鉄道会社を設立し路線を維持するという流れになる。 では小浜・京都ルートにおける並行在来線はどの路線なのか。考えられるのは湖西線だが、滋賀県は小浜・京都ルートは滋賀県内を通らないので湖西線は並行在来線ではないと主張し、経営分離にクギを刺す。
仮に並行在来線の問題も解決して首尾よく着工にこぎつけたとしても最長28年の工事期間中に社会情勢は大きく変わる可能性がある。今からおよそ30年後の経済や社会にとって、北陸新幹線の全線開業はどのような意味を持つのだろうか。
大坂 直樹 :東洋経済 記者