築65年老朽化団地、1棟まるごと断熱リノベで暑い、寒い、カビ・結露と決別! 住人は住みながら改修・仮住まいや引越しなしで 「アンレーベ横浜星川」神奈川県横浜市
改修を行った2018年当時に空いていた住戸は全てフルリノベーションされました。それら10戸のうち4戸は以前から住んでいた人がフルリノベーションを選択して移動。残りの6戸のうち4戸は部分リノベーションの工事中に仮住まいとして使用し、以後は入居者を募集。募集するとすぐに入居が決まるようになり、満室になったそうです。
団地やマンションなど、集合住宅で快適に住み続けるために大切なこと
旧桜ヶ丘共同住宅はアンレーベ横浜星川と名前を変え、以後も退去する人がいても「募集すればすぐに入居を希望される方から連絡がある」(上田さん)という状態です。 リノベーションされた部屋は若い世代からの人気が高く、建物の問題とともに課題だった住人の高齢化にも歯止めがかかりました。改修工事の後、フルリノベーション住戸に入居した世帯は、60代以上の世帯が6世帯、20代~40代の世帯は21世帯(延べ数)と高齢者だけでなく、若年世帯からも支持を得られるようになったことでほとんど空室のない状態を維持できるようになっています。
それも上田さんたちが工事前から大切にしてきた「お住まいの方のことを第一に考える」姿勢の賜物と言えます。 「工事前は工事期間が11カ月と長期間に及ぶため、お住まいの方からは多くの苦情が寄せられるだろうと予想していました。そのため考えうる限り、お住まいの方への配慮を意識しながら工事を進めたのです。 ご希望に応じてプランを選べるようにしたことに加え、例えば説明会を事業の進捗に合わせて段階ごとに開催してみなさんに十分納得いただけるよう繰り返し説明しました。フルリノベーションと部分リノベーションのモデル住戸を先につくって、実際に見てからプランを決めていただくようにしたことも工夫のひとつです。 さらに全てのプランで行うサッシや設備の交換においては、事前にアンケートでお住まいの方のご都合のいい日時を伺ってご希望の日程で作業を行うようにしました。おかげさまで苦情のようなものはなく、工事が終わる頃には設計・工事監理・施工を担当した馬淵建設株式会社の現場担当者とお住まいの方とは名前で呼び合うほどの仲になっていました」 上田さんは「お住まいの方に最大限配慮した対応」を「お互いの合意や丁寧なコミュニケーションが大事であることを痛感する機会にもなった」と振り返ります。 日本全国で建物の老朽化が社会問題になっている今、団地に限らず、建て替えや改修の必要性に迫られている集合住宅が多くあることでしょう。アンレーベ横浜星川は、単に老朽化して危険なところを修繕するのではなく、住む人の快適な住環境を維持・向上させるために断熱性能を上げる工事を行なった結果、多くの世代に支持され空室がなくなった好例と言えます。建物を大切に使い続け、住む人の負担を減らしながら、適切な改修を行ったこの取り組みを多くの人に参考にしてほしいと思います。 ●取材協力 ・神奈川県住宅供給公社 ・アンレーベ横浜星川
唐松 奈津子(りんかく)