結婚の「世界線」 695年後、子供は1人に 皆婚、難婚、そして無婚…時計の針戻せるか
■皆婚社会から難婚社会、無婚社会へ
大正から平成初頭までの間、生涯未婚率は男女とも5%前後で推移していた。社会の大半の人々が結婚する、「皆婚社会」が成立していたといえる。
「皆婚社会では、未婚状態がよりつらくなる『未婚ペナルティー』が発生していた可能性がある」。経済の視点で「幸福」について研究している拓殖大教授の佐藤一磨(家族経済学)は、こう推測する。
誰もが結婚する社会では、未婚者は「当たり前の状態からの逸脱」とみなされ、相対的に幸福度が押し下げられる。皮肉めいているが、現代の日本社会は「幸福の観点でいえば、未婚者にとってより生きやすい社会となったのではないか」という。
国立社会保障・人口問題研究所の試算によると、2050年に27都道府県で単身世帯が4割を超える。かつての皆婚社会は難婚社会を経て、やがて「無婚社会」へと到達するのだろうか。
■誰かと生活望むも…経済上の不安
子ども人口時計の開発者である吉田は、こう訴える。「女性や高齢者が就業できる環境を整え、全ての人が『総活躍』する社会を目指すべきだ」
一人でも胸を張って生きていける社会は、それはそれで素晴らしい。だが、大切な誰かと生活をともにし、その人との間に子をもうけ、人生を歩むことを望んでいるにもかかわらず、経済上の不安などからそれがかなえられない社会は、素晴らしいとはいえない。
障害を取り除くために、知恵を絞らなければならない。出生数の減少が止まらない限り、「時計」の針が戻ることはないのだから。
=敬称略