「痛みの少ない注射針」の意外な開発裏話、テルモ開発者が「当たり前」を超重視するワケ
グッドデザイン賞で言われた「ある言葉」とは
──そんな「ナノパスシリーズ」は、2005年度の「グッドデザイン大賞」にも選ばれました。 大谷内氏:グッドデザイン大賞の受賞時に、審査委員長でプロダクトデザイナーの喜多 俊之氏がおっしゃっていたのは、「今の日本のモノ作りの風潮は、“できないからこうなった”という言い訳型のモノ作りになっている」ということでした。それに対し「ナノパスシリーズ」は「“できないからこうなった”を言い訳せずに、ぶらさずに、最後までやり遂げたという点がデザインとして評価に値する」という言葉をかけてもらいました。今でもこの喜多氏の言葉は、頭の中に残っています。 ──現在はフェローとして後輩に実際アドバイスをされる立場にあると思いますが、後輩に伝えるよう心掛けていることはありますか。 大谷内氏:端的にいうと「絶対目的を変えるな」ということですね。目的を明確化することです。たとえば、「痛みの少ない注射針」というのは患者さんのつらい闘病生活を変える、という目的を実現するための手段です。ですから、目的を明確にして、それを達成するための手段を考えるということを伝えるようにしています。
聞き手:アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰