「大江戸温泉が高級化路線」いったい何が変わったのか 西日本を中心に展開する「湯快リゾート」と統合
ブランド統合後は、現在の湯快リゾートの施設も、改装する際には大江戸温泉物語のPremiumシリーズやTAOYAへとリブランドしていくという。以上が、これまで両ブランドが歩んできた経緯の概略だ。 ■関西圏では大江戸と湯快の知名度は、ほぼ一緒だった では、今回のブランド統合には、どのようなメリットがあるのだろうか。まず疑問に思うのは、東日本では大江戸温泉物語の知名度が圧倒的であるものの、西日本では知名度のある湯快リゾートというブランドを消滅させるのは、果たして得策なのかということである。梅村氏に聞くと、この点については事前に調査を行ったという。
「関西圏において行った調査では、大江戸と湯快の知名度は、ほぼ一緒だった。また、大江戸と湯快はともにバイキング形式での食事を提供しているが、食事のイメージに関しては大江戸が勝っているという結果だった。これらのことを踏まえ、大江戸ブランドで統一したほうが、メリットが大きいと判断した」 さらに事業会社は別々ではあるものの、トータルで66施設に増えることで「食材等の仕入れ交渉などでスケールメリットを享受できる」ほか、「両社の強みを相互に採り入れることで、サービスの向上も図れる」(梅村氏)という。
具体的にはまず、大江戸の強みである食事のノウハウを湯快の施設に展開する。大江戸では、ステーキ等の料理をその場で調理し、アツアツで提供する「ライブキッチン」というサービスが強化されている。また、TAOYAでは、夕食時のアルコール類やラウンジのドリンクをはじめとする館内のほぼ全サービスが宿泊料金に含まれ、財布を持ち歩かずに済む「オールインクルーシブ」というサービスを提供している(Premiumシリーズでも、ラウンジのドリンク等は無料)。こうしたサービスを今後、湯快の施設にも導入していく。
一方で、「湯快の最大の強みは簡素化された効率的なオペレーションだ。満足度を落とさないようにしつつ、湯快のオペレーションのいい部分を大江戸にも採り入れる」(梅村氏)という。 さらに利用者の視点に立って見ても、大江戸の施設をお得に利用できる「いいふろ会員」は、現行の37施設の倍近い66施設を会員価格で利用できるようになるなど、統合のメリットは大きい。 ■提供サービスは未完成 さて、筆者はこの原稿を書くに当たり、TAOYAと大江戸温泉物語Premium、それぞれに宿泊した。リニューアルされた施設に実際に泊まってみると、とくにハード面は、かつての大江戸とは見違えるように洗練されているのに驚いたが、その一方で課題も見えた。以下、2024年6月にリニューアルオープンした「大江戸温泉物語Premium 伊勢志摩」への宿泊体験を中心に記すことにする。