子どもの奨学金を使い込んだ母。家族をバラバラにした元凶は?
家族を想う気持ちから
ライオさん兄弟の心理的・金銭的負担は当然、問題である。しかし、母の境遇に目を向けても悲しいものがある。 ライオさん母がマルチ商法にのめり込んだ原動力は、"家族のため”なのだから。 「マルチ商法で成功することによって、家族の助けになりたいんですよね、母は。さらにその根底にあるのはおそらく、祖父母に承認されたいという欲求でしょう。 離婚して、自分の親に心配をかけてしまったという負い目もあるかもしれません。よく、『祖父母の健康は、自分がサプリで管理してきた!』というようなことを話しています。 僕から見れば、祖父母なりに健康を気遣って生活しているので、サプリのおかげというのは違うと思うんですけど」
マルチ商法の無責任な煽り
そうして“家族のために”と健康食品を含めた高価な日用品を買い込み、求められていないのに、なかば押し付けるような形で配り歩く母。 その結果、トラブルになる。 悲しいすれ違いである。 「この間も、2万円ほどする磁気ネックレスを渡されました。借金の原因となった“夢の二世帯住宅”だって、結局、肝心の祖父母は住んでいません。 僕も、親を悪く言いたいわけではないんです。マルチ商法が販売員の想いを暴走させ、家族が壊れる苦しさを知ってもらえればと思っています」 ライオさんのケースのように、マルチ商法は、販売員自身の欲望だけをあおるのではない点が、やっかいである。
美談を信じて
「家族の皆が幸せになる販売システム」「環境改善にもつながる」といった話を信じた正義感から、広める人もめずらしくないのだ。 ネットワークビジネス(マルチ商法の別名)の専門誌を開けば、そのような理想が星の数ほど語られている。 「家族を想う気持ちが原動力」が理解できるぶん、悩みはより複雑になっていく。マルチ商法会員の家族を持つ、苦しい沼の話である。 <取材・文/山田ノジル> 【山田ノジル】 自然派、○○ヒーリング、マルチ商法、フェムケア、妊活、〇〇育児。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のない謎物件をウォッチング中。長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこへ潜む「トンデモ」の存在を実感。愛とツッコミ精神を交え、斬り込んでいる。2018年、当連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。twitter:@YamadaNojiru
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