全身の不調を招く「むくみ腸」、自律神経と腸のスペシャリストに聞いた内側と外側からの対策
顔や脚などに起こりやすい“むくみ”。むくみは余分な水分が細胞にたまった状態で、塩分のとりすぎや睡眠不足など、さまざまな要因で引き起こされる。 【写真】「健康な腸」と「むくみ腸」の比較、外側からの対策は湯船で腸もみ
腸のむくみは血液の滞りが原因
冬は寒さによる血行不良もむくみの原因になるが、気をつけたいのは目に見えるむくみではなく、身体の内側の“腸”で起こっているむくみ。 「実は腸も身体と同じようにむくむことがあるんです。健康な腸とむくんでいる腸を比較すると、ヤケドしたようにパンパンに腫れた状態になっているのがわかります。この“むくみ腸”の状態になると、お通じに影響が出る以外にも、身体にさまざまな不調を招くんです」 そう話すのは、日本で初めての便秘外来を開設した、腸に詳しい小林弘幸先生。 「むくみというと、塩分や水分のとりすぎが原因と思うかもしれませんが、むくみ腸の最大の原因は、血液の滞りです。通常、食べたものは小腸で栄養が吸収され、大腸で水分を吸収し便として排出されます。ですが、血流が悪くなると水分や栄養を吸収する力が弱くなり、吸収されなかった水分は腸の粘膜にある細胞に入り込んで、小腸と大腸の両方が、余分な水分を含み、むくんだ状態になる」(小林先生、以下同) すると、腸自体の働きが悪くなり、お腹が張る、便秘や下痢などの症状が出る。 「むくみの原因である血液が滞る理由には、自律神経が大きく影響しています。自律神経には、全身の血液をコントロールする役割がありますが、自律神経は乱れやすい。特に冬は外と室内との寒暖差が激しく、自律神経が乱れやすいので腸もむくみやすい時季といえます」 また、むくみ腸は女性に多いという。更年期を迎え、女性ホルモンが減少することも、むくみ腸の原因に。さらに、便秘が多く、下剤を常用している人も要注意。下剤の刺激で腸の粘膜が炎症し、むくみ腸を引き起こすのだ。
免疫ダダ下がりでインフルのキケンも
では、むくみ腸になると便秘や下痢以外に身体にどのような影響があるのか。 「この冬に注意してほしいのはインフルエンザ。全国で大流行していますが、むくみ腸だと感染する可能性が大幅に上がります。腸は食べ物を消化、吸収するだけでなく、ウイルスや病原菌を撃退する免疫細胞が多く生息している場所だからです」 病原菌やウイルスの多くは、口から体内に入り込む。そのため腸には、口から侵入してきたウイルスを撃退するための、さまざまな免疫細胞が生息しているのだ。 「身体の免疫細胞の7割は腸に存在すると考えられています。つまり、腸が不健康な状態だと、免疫力が極端に低下することになる。インフルエンザはもちろん、花粉症などの季節病も発症しやすくなります」 2月になると、花粉の飛来が始まる。花粉症の人はむくみ腸に要注意だ。 さらに、腸には精神を安定させる神経伝達ホルモンで幸せホルモンとも呼ばれる“セロトニン”を作る役割も。なんと、セロトニンの9割は、腸内で作られているのだ。 「セロトニンの量が不足すると睡眠の質が低下する、うつ病を発症するリスクが上がるなどの影響が。むくみ腸になり腸内環境が乱れていると、身体の不調だけでなく、メンタルにも大きな影響を与えてしまうのです」