【博多ストーカー殺人】裁判メモ(3)「できるだけ長く刑務所へ」「一片の慈悲もなく残忍極まりない」
◆「懲役30年」を求刑
また「法治国家に対する信頼を損ないかねない重大な類型の事件であり、禁止命令に違反してストーカーの被害者を殺害したという法治国家への挑戦というべき特別な犯罪類型として捉えるべきである」と述べました。 さらに ・川野さんを包丁で少なくとも17回もの多数回突き刺したこと ・最も深い傷は20センチあったこと ・包丁の先端が折れ頭蓋骨に刺さっていたこと ・人目を意に介することなく川野さんに襲いかかり、通行人が驚いて犯行を目撃しているのにも構わず犯行を完遂したこと などとして、「川野さん殺害の犯行様態は強固な殺意にもとづく一片の慈悲もない残忍極まりないもので、悪質性が極めて高い犯行」としました。 その上で、「被害結果は極めて重大」「自己の非を一顧だにせず、短絡的・自己中心的な犯行動機に酌量の余地は皆無であり、生命軽視の無慈悲な意思決定は極めて厳しい非難に値する」とし、情状面については「寺内被告が成人し仕事を得て相応の社会生活を送っていたのであり、今回の事件が男女関係の問題として生じた事件であることを踏まえると、幼少期の生活環境を持ち出して検討することは明らかに不相当である」として 寺内被告に対し有期刑の上限となる懲役30年を求刑しました。
◆弁護側「懲役17年が妥当」
一方、弁護側は最終の意見陳述で、以下のように述べました。 ・寺内被告は事件当日、川野さんを待ち伏せしていた訳ではなく、偶発的に起こった殺人事件であって、計画的なものではない ・事件当日に所持していた包丁は自身が起こした傷害事件に対する報復を恐れて、日頃から持ち歩いていたものであり、川野さんを殺害するために準備されたものではない ・ストーカー規制法に基づく警告後、寺内さんは事件当日まで川野さんと接触していなかった ・警告によって店などから被害者との交際の事実がばれるなどして、信用を失ったことに対する恨みから、川野さんに「ひと言言ってやりたい」「謝罪させたい」という気持ちはあったものの、復縁したいなどの恋愛感情は既に消滅していた ・事件当日、寺内さんは携帯電話料金を支払うために川野さんの勤務先の近くである事件現場周辺にいた ことなどを挙げた上で、「川野さんを殺害したという事実に争いはないが、寺内被告の行動は、ストーカー規制法に基づく『待ち伏せ』『つきまとい』に該当せず、ストーカー規制法については無罪である」「包丁は護身用に持ち歩いていたもので、犯行はあくまで偶然が重なった偶発的なものであり、計画性は認められない」とし、 として「傷害罪、銃刀法違反の罪、殺人罪の3つを加味して、過去の判例に照らすと量刑は懲役17年が妥当である」と主張しました。