宮城県、強制不妊手術の被害者900人に個別通知検討 補償法巡り
旧優生保護法(1948~96年)の下で強制不妊手術を受けた被害者の補償を定めた法律(補償法)の来年1月施行を巡り、宮城県が氏名や手術理由などの記録が残る被害者900人への個別通知の検討を始めたことが県への取材で判明した。県はこれまで、プライバシーの保護などを理由に被害通知には消極的な姿勢だったが、実現すれば大きな方向転換となる。 【写真】「優生手術の必要を認められる」 当時の資料 補償法は最高裁が7月に旧法を違憲とし、国に賠償を命じたことを受け、10月に議員立法で成立した。被害者本人に1500万円を支給するなどの内容で、来年1月17日に施行される。個別通知は義務ではないが、政府は都道府県に対し通知を促す文書を送っている。 県子育て社会推進課の担当者は取材に「個別通知を実施している他県の例を調査している」とした上で「プライバシーに配慮した方法を検討し、法律施行前には実施について方針を決めたい」と説明する。 旧法の下で本人の同意なく手術されたのは全国で約1万6000人。だが障害者が多く、被害を認識できないケースが少なくないと考えられている。最高裁判決に先立つ2019年、被害者に320万円を支給する一時金支給法が施行されたが、認定されたのは今年11月末時点で1154件にとどまる。 宮城の手術件数は全国で2番目に多い1406件。うち、県庁に記録が残っているのは900人分だ。だが、これまで県は「同姓同名の人に通知する恐れがある」などとプライバシー保護を理由に実施に否定的だった。 「最高裁で国の責任が認められた上でも、個別通知しないことは行政側の不作為になる。必ず実施しなければならない」。当事者を支援し、個別通知の必要を訴えてきた全国弁護団共同代表の新里宏二弁護士はこう強調する。 手術は当時、国からの委任を受けた都道府県が実施。対象者に「別の手術」と偽って行うことも許されていた。宮城県の場合、62年の県議会で手術増を求める県議に対し県幹部が「使命を果たしたい」と応じるなど県が手術を推進していたことが分かっている。 新里弁護士は「大事なのは県が被害者に直接謝罪することだ。プライバシー保護を不作為の隠れみのにしてはならない」とくぎを刺す。【遠藤大志】