Googleのサードパーティ Cookie 廃止撤回でも、代替IDへの取り組みを続けるメディアエージェンシーたちの思惑
プライバシーサンドボックスでは心許ない
Googleのプライバシーサンドボックスそのものに関しては、そのメリットに対するメディアエージェンシーの反応は総じて鈍い。オムニコムの意見書には次のように書かれている。「Cookieに関する発表と同時に、プライバシーサンドボックスの内部テストの結果も発表された。このテストにより、サードパーティCookie不在の損失をサンドボックスである程度回復できることが示されたが、そもそも広告主のインプットや詳細な方法論を欠いており、2025年のキャンペーンパフォーマンスを予測するにはあまりに心許ない」。 IPGのパフォーマンスマーケティングエージェンシーであるキネッソ(Kinesso)でプラットフォームとインテリジェンスのグローバル責任者を務めるクリス・シムカット氏は、「キネッソは独自の不干渉主義を取っている」と話し、次のように続ける。 「プライバシーサンドボックスの登場以来、議論は二転三転した。当初は、これはすべてのクライアントに実装する必要があるものだと認識していた。ところが実際には、物事が進むに伴い、これらはむしろアドプラットフォーム自身が利用すべきAPIであり、テクノロジーであることが分かってきた。そして、プラットフォーム内で広告を実行したり購入したりする人々にこうした機能を提供するのも彼らプラットフォーマーだ」。
実は変革のチャンスをつかみそこねたのか……?
しかし結局のところ、Googleの方針転換によって、より大きなチャンスを逃してしまったという痛恨の念もある。というのも、この決断が現在ある形のトラッキングを積極的に排除するものではなく、意思決定の責任を消費者に負わせるものであるからだ。 ニューエンゲン(New Engen)でアドバンストアナリティクスと効果測定担当のシニアバイスプレジデントを務めるアンドリュー・リチャードソン氏は、「エージェンシーは気を抜いている場合ではない」と警告する。消費者によるChromeでのオプトアウト設定だけでも、「シグナルはすでに失われつつある」とリチャードソン氏は指摘する。多くのユーザーがCookieをブロックするブラウザを使用しているうえ、AppleのSafariブラウザでも広告ブロックを使われる可能性はある。 「業界として、もはや不可避となったシグナルの減少を避けようとするよりも、消費者のプライバシー保護を優先し、Cookieなき世界に適応する必要がある」とリチャードソン氏は述べている。 過去6年間にGDPRがやってきたことは、消費者に(訪問するすべてのWebサイトでCookieの許可もしくは拒否を迫るという)当初の意図とは違う結果をもたらした。同じことが再び起きない保証はどこにもない。 「少なくともこの分岐点では、良くも悪くもインターネットを改革する機会を逸してしまったように思う」とアセンブリーのタイウォ氏は言い、「意味ある方法でイノベーションを起こすチャンスはつかみそこねたと感じている」と付け加えた。 [原文:Media Buying Briefing: Media agencies forge on with other ID solutions regardless of Google’s curtail of third-party cookie deprecation] Michael Bürgi and Antoinette Siu(翻訳:英じゅんこ、編集:島田涼平)
編集部