42歳の女王はなぜ戦う?藤岡奈穂子が日本人初の5階級制覇の偉業達成
プロボクシングのWBO女子世界ライトフライ級の王座決定戦が1日、後楽園ホールで行われ、WBA女子世界フライ級王者の藤岡奈穂子(42、竹原慎二&畑山隆則)が、前IBF女子世界アトム級王者のヨカスタ・バジェ(25、コスタリカ)を3-0の判定で破り男女含めて日本人初となる5階級制覇の偉業を成し遂げた。 ――・――・――・――・―――・―――・――――・ 42歳。 膝の上に置かれたピンク色のベルトは都合5本目のコレクションである。 「オレらの時代の昔ならおばあちゃん」 セコンドで声をからした元WBA世界ミドル級王者の竹原慎二が、スマホをいじりながら笑う。 日本人初。世界でも女子では、アマンダ・セラノ(プエルトリコ)に次ぐ史上2人目の偉業となる5階級制覇を藤岡奈穂子が果たした。 「ほっとした」 それが第一声。 「もっと自分らしいボクシングを見せれば良かったが手こずった」 コスタリカから来た前IBF女子世界アトム級王者はベルトを母国へ持って帰る気満々だった。 スピードとストレート系のパンチを軸にした手数で序盤、藤岡のプレッシャーに抵抗した。「距離が合わずに迷った」。だが、そこは百戦錬磨の4階級王者である。 「ワンパターンであることが読めた。右を狙ってきていた。逆にこっちにはたくさん引き出しがあるから」 4ラウンドだった。 「プレッシャーをかけろ! 下から上だ!」 竹原の声が飛んだと同時。バジェが右のパンチを繰り出してがら空きになったボディに藤岡のアッパーが食い込む。さらにもう一発。「簡単に入った。あれが糸口になった」。観客席に両手を挙げて藤岡はコーナーに帰った。 そこからは前へ。ひたすら前へ。 トランクスに縫いこんだ「不撓不屈」の4文字。その言葉に忠実に。プレッシャーとパワーで圧倒した。 しかも単発ではなく必ずツーからスリーのコンビネーションにまとめて、吹き飛ばすようなフックを振り回すから体格で劣るコスタリカの美人ボクサーはたまったものじゃない。5ラウンドには、左目の上辺りをカットさせて血まみれにし(バッティングの判断だったが)、7ラウンドには、また左のボディアッパーがカウンターになって炸裂。バジェはよろけた。 中盤以降はワンサイドの展開となっての最終10ラウンド。 「相手がタフだとはわかっていたけれど、自分にハッパをかける意味でKOを宣言していたので、倒さなければ格好悪いと思った」。藤岡は強引にKOを狙いにいった。しかし、海を渡ってきた元王者もプライドを守った。「2発目、3発目をもらってくれなかった」。壮絶なパンチの応酬の末、試合終了を告げるゴングが鳴ると、藤岡は両膝をキャンバスに着きホールの天を仰ぐようにして両手を挙げた。 判定はもう聞くまでもなかった。「99-91」「98-92」「96-94」の3-0勝利。 親交のある歌手で俳優の吉川晃司さんがリングに上がり藤岡を肩車した。 観客の公式発表は1764人。試合前には、元光GENJIの大沢樹生さん、俳優の窪塚洋介さん、タレントのせんだみつおさんらの来場も紹介されホールの盛り上がりは最高潮だった。