42歳の女王はなぜ戦う?藤岡奈穂子が日本人初の5階級制覇の偉業達成
2年前「ボクシング女子会」を立ち上げた。徐々にメンバーは拡大して小学生への「夢教室」やアスリート食の講習イベントなど活動の幅も広がっている。先日、多田悦子とのWBO女子アジアパシフィック王座決定戦に完敗し引退を決めた柴田直子は、その創設メンバーの一人だが藤岡の決意と活動を近くで見てきた。 「女子のボクシングを盛り上げたい。みんなに知ってもらうには、どうすればいいかを考えている。だから自分が42歳になって話題の先頭を走るんだと」 なぜこの年齢まで? 愚問をなげかけると、藤岡は、「モチベーションですね」。 戦う理由。それは女子ボクシング界を背負う使命である。 女子の日本タイトルが創設されるなど、JBCや日本プロボクシング協会が一体となって女子のボクシングを普及しようという動きも出てきたが、まだまだ低迷期は抜け出せていない。 まだあなたの使命はあるでしょう?辞められないのでは? そう問うと「後輩もいることだし、私がいなくなっても大丈夫でしょう。下が育ってもらわないと困るんですよ」。イエスともノーとも言わなかった。 試合前、ブログの「NOWorNEVER」に「日本で戦うのはこれが最後」と書いていた。その真意を聞くと、正直にこう返した。 「前座でもいいのでアメリカの本場のリングに立ってみたいんです」 ドイツ、メキシコで戦ってきたが、5階級制覇の女王が狙う次なる夢はラスベガス。 そして「女子の場合、誰と戦うかが重要」とも言う。 試合前にOPBF東洋太平洋女子フライ級王者のチャオズ 箕輪(30、ワタナベ)が挑戦状を叩きつけた。11月29日にWBO女子アジアパシフィック・ライトフライ級王座を獲得した天海ツナミ(アルファ)も挑戦権があることを主張している。 「5階級制覇の藤岡に勝つことっておいしいもんね」と竹原。藤岡も「今は、ちょっと考えられない」と、言葉を濁した。女王のクビを狙ってくる日本の女子ボクサーと戦っていくのも、日本の女子ボクシング界の普及と発展を背負い続ける彼女の宿命なのかもしれない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)