トランプ次期大統領が画策するウクライナ戦争の停戦・和平交渉、ウクライナの“中立国化”が現実的ではない理由
■ 「屈辱の中立政策」を耐え忍びNATO入りを実現したフィンランド 北欧のフィンランドの“生き様”もウクライナにとって大いに参考になるかもしれない。 この国は1000km以上にわたりロシアと国境を接し、旧ソ連から何度も侵略戦争を仕掛けられ領土の一部を割譲されるなど、現在のウクライナの実情に似た暗い歴史を抱える。 ロシアのウクライナ侵略を機に、長年維持した中立国の看板を捨て、2023年に待望のNATO加盟を果たした。 フィンランドが実践し続けた中立政策は非常に独特で、国家体制はあくまでも民主主義・資本主義を堅持し西側に極めて近いが、思想的には旧ソ連/ロシアの意に服従するというもの。「体は欧米、脳は旧ソ連」との屈辱的な意味も込めて「フィンランド化」と揶揄された。 19世紀にロシア帝国の版図に組み込まれていたフィンランドは、1917年のロシア革命を好機と捉えて独立を果たし中立政策を試みた。だが、その後成立したソ連は勢力圏拡大に血道を上げ、周辺国への干渉・侵略を繰り返した。 フィンランドも例外ではなく、1900年代前半には冬戦争など幾度となく旧ソ連の侵略を受け、国土の一部も割譲されている。 第2次大戦後は冷戦体制の中で現実路線を選択。1948年に「ソ連・フィンランド友好協力相互援助条約」を締結し、資本主義・民主主義の保障と引き替えに、旧ソ連はフィンランドの政治やメディアを監視下に置いた。東側陣営への批判を厳禁とし、フィンランド軍の組織編成や兵器体系も旧ソ連式としている。 そして、旧ソ連崩壊後は同条約を破棄。新たにロシアによる政治やメディアの監視、フィンランド軍への関与など政治・軍事的な締め付けを全廃した新条約を新生ロシアとの間で締結している。 今年11月下旬、トランプ氏は新設のウクライナ特使に元米陸軍中将のケロッグ氏を起用すると発表した。暫定的に前線に休戦ラインを引き和平に持ち込む「朝鮮半島方式」を提唱するトランプ氏だけに、「24時間で戦争を終わらせる」ための布陣を着々と進めているようにも見える。 ゼレンスキー氏は「自国防衛にはNATO加盟か核武装」を持論に掲げ(後に核武装は否定)、自国領土の全奪還まで戦争を継続すると叫ぶものの、風向きの急変を感じたのか、強気姿勢に変化も見え始めている。 英メディアのインタビューでは、戦争停止の条件として、ウクライナが現在管理する地域をNATO傘下として安全保障を担保することを提案。占領された地域は今後の「外交的方法」で返還も交渉できると述べた。 果たしてウクライナ戦争は停戦・和平交渉が行われ、ウクライナの中立化が議題に上がるのだろうか。第2次トランプ政権の発足までに、もう一波乱も二波乱もありそうだ。
深川 孝行