和田秀樹 うつ病から職場復帰した人の約半数が5年以内に「再休職」へ…メンタルの不調をほとんど治せていない現実が意味する「精神医療崩壊」の実態とは
WHO(世界保健機関)の推定では、うつ病患者は人口の約3%いるとされており、心を病む人の人数は年々増加の一途をたどっています。精神科医・心療内科医の数は増え、メンタルクリニックも増えているのに、メンタルを病む人がなかなか良くならない「本当の理由」とは何なのでしょうか?よりよい医療を受けるためのヒントを、精神科医 和田秀樹氏著書『「精神医療」崩壊 メンタルの不調が心療内科・精神科で良くならない理由』から一部を抜粋して紹介します。 【書影】職場環境は変わっているはずなのに、メンタル不調の人はなぜ増加しているのか?精神科医 和田秀樹氏著『「精神医療」崩壊 メンタルの不調が心療内科・精神科で良くならない理由』 * * * * * * * ◆職場復帰した人の約半数が再休職という、治らない現実 うつ病で休職し、復職できたとしても、およそ半数が5年以内に再びメンタルの不調を訴え、休職に至るといわれています。 しかも、1回目の休職期間にくらべて、2回目の休職期間は1・5倍も長いというデータも出ています。 さらに、うつ病の再発回数が増えるごとに再発率が高まり、パフォーマンスが低下することが、厚労省の調査で報告されています。 これらの数値が示しているのは、日本人のメンタルの弱さではありません。 今の日本の精神医療では、一度発症したメンタルの不調をほとんど治せていないという現実です。 それを私は「精神医療崩壊」と呼んでいるのです。
◆安易に病名をつける医者たち 最近は、精神疾患と診断するのが適切かどうかわからない、いわばグレーゾーンの人たちにまで、安易に病名がつけられています。 そのことも、精神疾患増加の一端を担っています。 たとえば、精神科を受診して、「会社の上司と合わなくて出社したくない」と伝えると、わりと簡単に「適応障害」の診断書を書いてもらえます。 あるいは、「食欲がなく、夜の寝つきも悪い」と伝えただけで「軽いうつ」と診断されたり、「SNSに悪口を書かれて気持ちが落ち込んでいる」レベルの人に、「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」の診断を下したりするような医者もいます。
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