保護団体が一度譲渡した小鳥を、より高額な譲渡料で譲渡会に出展

別の保護団体から引き取った小鳥の扱いが物議を呼んでいる【写真：べるを商店ホームページより】

　何らかの理由で遺棄されたり、飼育が困難になったペットを新しい里親のもとにつなぐ譲渡会。そんな譲渡会に、ある保護団体が一度譲渡したはずの小鳥がより高額な譲渡料で出展されていた――。保護動物の“転売”とも言える行為に、ネット上で波紋が広がっている。いったい何があったのか。当初小鳥を保護していたNPO法人「ことりのおうち」と、譲渡会を主催した別の保護団体「べるを商店」に、一連のトラブルの経緯を聞いた。（取材・文＝佐藤佑輔） 【写真】べるを商店が公開した一連の経緯についての声明文 「当保護施設から里親として一般家庭に引き渡したヒメコンゴウインコが何故か　べるを商店さんの譲渡会にいる…まだ4週間前に譲渡したばかりなのに…」 　一連の問題は今月8日、べるを商店主催の譲渡会にことりのおうちのスタッフが参加したことで発覚。譲渡したはずのヒメコンゴウインコが譲渡会に出展されているのを飼育を担当していたスタッフが発見、その後SNS上で被害について報告した。 　一連の投稿では「残念な事に譲渡した一般家庭の方はべるを商店さんのスタッフさんなのがわかりました…保護団体が別の保護団体から立場明かさず里親になるのはうちの価値観からすると全くありえない事で理解に苦しみます」「うちで里子として出していた時の最低募金金額よりも高い金額で出されている…事実と違う作り話の情報を里親検討の方に伝えてるし…こんな事てあるんですね…悲しい現実ですね…」と経緯や心境をつづっている。 　当該のヒメコンゴウインコは、ことりのおうちが1年ほど前に問屋から直接引き取った2歳の個体で、自分の毛をむしってしまう毛引きのクセがあり、スタッフが他のストレス発散法などを教えながら、毛並みを整えおしゃべりを教えるなど大切に飼育していたもの。今年8月、譲渡を申し出た家族にショップ相場のおよそ半額となる13万円で譲渡されたが、今月18日に開催されたべるを商店の譲渡会では約1.5倍となる20万円の譲渡額がつけられていたという。さらに、譲渡会ではべるを商店のスタッフにより「うるさくてペットショップに返品された後、べるを商店が引き取り育てた子。うちに来たときには丸ハゲで、言葉も私が教えたんですよ」と、飼育を担当していたことりのおうちのスタッフ本人を前にうその説明がなされたという。 「あまりにもデタラメな作り話に、うちのスタッフもショックを受けてしまって……」とことりのおうち代表の高見広海理事長。ヒメコンゴウインコと2羽のセキセイインコを譲渡したときの状況について「今思えば、見学に来たときからちょっと様子がおかしかった。保護見学はペットショップなどとは違い、里親になる覚悟のある方が訪れるもの。遊びで見に来るものではないので、里親になる方やそのご家族のみで来るのが一般的ですが、そのときは3家族が連れ立って見学に来られました」と振り返る。 　その後、投稿を見たべるを商店の代表から連絡があり、スタッフの1人が立場を隠し3羽の小鳥を引き取ったことを認めた上で謝罪したという。一方で譲渡した本人とは連絡がつかず、代表は「本人は譲渡会の途中で救急車で運ばれて寝込んでいる。ヒメコンゴウインコは本人の娘が面倒を見ているのでお返しすることはできない」「セキセイインコ2羽は私が責任を持って面倒を見ます」と説明。その後は何度か連絡を取るも、べるを商店は弁護士を立てており、鳥たちは今も返還されていない状況だという。 「べるを商店さんは第一種動物取扱業者なので、保護活動や譲渡の過程で利益を出すことは認められています。ただ、身分を偽り小鳥を仕入れて、かわいそうなうその物語を作って詐欺のように譲渡を行うやり方は間違っている。べるを商店さんは信じている支援者の方のためにも、きちんとした説明をしてほしい」（ことりのおうち高見代表） 　べるを商店の代表は一時、ENCOUNTの取材に「保護団体では引き取りができないため、スタッフが個人で引き取ることになった」「ヒメコンゴウは栄養状態も悪く、サプリメントを併用し食事も改善した。検査料や通院費、食事などをいただく金額で譲渡額を設定した」など、ことりのおうちの飼育環境が劣悪なためレスキュー目的で小鳥を救い出したと説明。その後「こちらで再度、確認することとなりました」と連絡があった。この点について、ことりのおうちの高見代表は「ある瞬間を切り取れば鳥かごが汚れていることもあるかもしれませんが、いつも午後にはきちんと清掃をしている。見学は365日オープンにしていますし、保健所も入っていてやましいところはありません」と主張している。 　両者の主張には食い違う部分も多いが、いずれにせよ、動物たちが被害を受けることがあってはならない。 　18日、べるを商店は一連の経緯についてあらためて声明文を公表。「ことりのおうち様からご指摘がありましたヒメコンゴウインコ等の引き取りについて当店スタッフが3羽について引き取りを受けたことは間違いございません。この点について心よりお詫び申し上げます」と一部の事実関係を認め謝罪した。 　ことりのおうちによる一連の投稿では、他にもべるを商店による複数の疑惑を訴えているが、声明ではこれらの指摘について「客観的な事実関係と異なる点がございます」と否定。「明確に事実関係が異なる投稿について、今後、Xその他のSNS等での投稿（単なるリポストや「いいね」を押すことを含みます）については厳にお控え頂きたく存じます。なお、本日以降にかかる投稿がなされた場合、近時の最高裁判例においても名誉棄損が成立するものとされていることに照らし、当店においても厳格な対応を取らざるを得なくなります点を申し添えます」としている。 　べるを商店の弁護士はENCOUNTの取材に「ヒメコンゴウインコとセキセイインコ2羽に関すること以外はすべて事実無根」「当事者の一方が明確に否定している事実関係について、もう一方の当事者への確認が行われずに報道が行われる場合には、誠に遺憾ながら、名誉棄損に基づく損害賠償請求を行うことも視野に入れております」と回答している。