「吃音なら教員諦めよ」心ない言葉に屈さず、模擬授業で夢追う当事者 広がる連帯の輪
言葉が滑らかに出ない「吃音(きつおん)」に悩む教員志望の学生らが、夢の実現に向けて各地で模擬授業を開いている。人前で話す経験を重ねて自信をつけることを目的としたプロジェクト名は「号令に時間がかかる教室」。吃音当事者の輪が広がり、大阪府八尾市では、学校研修の一環で現役教員を生徒役とし、教員も吃音の児童生徒への対応を学ぶ〝発展型〟授業が初めて行われた。 【図でチェック】吃音の症状 ■生徒役は現役教員50人 「言葉が出ない子に『ゆっくりでいいよ』『リラックスして』と声を掛けると、プレッシャーになる場合もあります」 5月30日、八尾市立南山本小学校の一室。教壇に立った大阪市の大学4年、藤原実緒さん(21)は吃音当事者として自身の経験を踏まえ、時折言葉に詰まりながらも丁寧に説明した。 生徒として聞いていたのは、八尾市の小中学校に勤務する若手からベテランまでの教員約50人。藤原さんは「これだけの先生の前での授業は初めて。緊張で症状が強く出た」と悔しがった。 続くグループワークでは藤原さんと、吃音がある他の教員志望者8人が9班に分かれ、それぞれ現役教員と交流した。 吃音が出た際、見守ってほしい人もいれば、助け舟がほしい人もいる。一律的な対応マニュアルはない。教員志望者の一人は「当事者である児童生徒がどうしてほしいか、話を聞いてあげて」と現役教員に求めた。 終了後、吃音の子供を育てている40代の女性教員は「自分の対応が正しいか分からず手探りだったが、研修で自信が持てた」。別の教員は「知らないことばかりだった。もっと学んで子供たちが安心できるように対応したい」と気持ちを新たにしていた。 ■4府県で5回開催 「教室」は昨年12月の大阪府大東市を皮切りに京都、徳島、和歌山の計4府県で5回開催。現役教員を生徒役とする形式は直近の八尾市が初めてで、大阪府高槻市でも予定されている。 「教室」を始めたきっかけは、藤原さんとある女性の出会いだった。 高校時代、親身になってくれた担任に憧れ、教員を志した藤原さん。国立大の教育学部に進学したが講義で発表する際、大勢の学生を前に固まってしまい、教授にこう言われた。