辞退者相次ぐリオ五輪テニスになぜ錦織は参戦するのか?
リオ五輪の開幕まで3週間を切ったが、ここにきてテニスプレーヤーの出場辞退表明が相次いでいる。この週末、男子のトップ10だけでもウィンブルドン準優勝のミロシュ・ラオニッチに続いて、同ベスト4のトマーシュ・ベルディヒが辞退。ともにジカ熱に対する不安を主な理由としている。これで、トップ20の中ですでに5人いる辞退者に新たに2人が加わった。 ラオニッチもベルディヒもこれまで積極的に出場の意気込みを発信していたが、彼らの決断には多くの人が納得するだろう。欠場理由が表向きにすぎないことも了解済みだ。夏のスケジュールは苛酷で、今月25日からトロントでのマスターズ大会が始まり、その決勝が31日、来月5日がオリンピックの開会式で、6日に男子シングルスが始まる。決勝まで勝ち進めば14日が最終日となり、その日は次のマスターズであるシンシナチ大会の開幕日である。2つのマスターズ大会にオリンピックがギチギチにはさまっているわけで、ただでさえ大変なところへ、今回のオリンピックからATPやWTAのランキングのもとになるポイントが分配されなくなった。このことは、彼らが厳しいスケジュールの中でもオリンピックに向かおうとするモチベーションに少なからず影響を与えている。 錦織圭は、ライバルたちの相次ぐ辞退のニュースをどう聞いただろう。ウィンブルドンでは左脇腹痛のため4回戦を途中棄権し、その後日本で治療に専念していた錦織は、先日、ナショナルトレーニングセンターで記者会見を行なった。ジカ熱については「あまり心配していない」と言ったが、「ポイントがつかないことは残念」と何度か口にした。「変なふうに書かれるかもしれないですけど…」と慎重に言葉を選び、ときには喉元まで出た言葉を飲み込みながら、このような話をしている。 「オリンピックは難しいですね。ポイントがないのは正直寂しい。だからといってモチベーションがないわけではなく、違うところにある。日本人としてあの場にいられる喜びと誇り。得られるものもある。でもツアーとはまったく別物。国のお金で国のサポートを受けて国の代表として戦う場なので、いいニュースを届けたい」 期待してくれる人たちをがっかりさせないように、それでも自分の心に極力偽りのないように語る姿勢が、錦織らしかった。