「守備なら富田のほうが…とか」男子バレー“わずか12名”熾烈な五輪メンバー競争の舞台ウラ「正直に言うと、きつかった」大塚達宣の決意表明
6月23日、フィリピン。 マニラ近郊のパサイ市にあるSMモールオブ・アジアアリーナには、「ニッポン!」と「U・S・A!」のコールが入り乱れた。 【画像】「大塚が小川がラリーが深津が叫んでる…!」TVには映らない“男子バレーの絆”がわかるベンチメンバーの全力応援「いま見ると泣ける」〈他100枚超〉 ネーションズリーグ予選ラウンド最終戦。強豪アメリカと対戦した日本は、石川祐希や関田誠大といった主軸選手をリザーブに回し、これまで出場機会が限られてきた選手たちをスターティングメンバーとして起用した。 2セットを先取して迎えた第3セット終盤。宮浦健人が3本連続のサービスエースで試合を決定づけると、最後は甲斐優斗のスパイクで25対19。公式戦では実に8年ぶりとなるアメリカからの勝利に、日本代表の選手たちが歓喜した。 オポジットの西田有志が宮浦を、セッターの関田が深津旭弘を、リベロの山本智大が小川智大を――試合後、同じポジションの選手が駆け寄って、互いに笑顔で労いながらストレッチをする。アウトサイドヒッターの大塚達宣も、第2セット序盤に自身と交代してコートに送られた富田将馬のもとへ駆け寄った。 「3連戦で思った以上に疲労がたまっていて。公式練習の時から、全然力が入らなかったので、やばいって思っていたんですけど、将馬さんが安定していたし、みんな楽しそうにプレーしていた。この勝利がリズムをつくって、これからにつながるきっかけになったと思います」
ブラン監督を悩ませた「12名」の枠
その翌日、6月24日。フィリップ・ブラン監督はオンラインで行われた会見で7月27日に開幕するパリ五輪に出場する内定選手12名を発表した。 ポジションごとに、選手の名をフルネームで“さん”をつけて読み上げる。12名を読み上げた後、最後に交替要員として登録する13番目の選手として、富田の名を挙げた。 「できることならば、(五輪以外の公式戦と同様に)14名を連れて行きたかった」 前夜、歓喜の輪の中で見せた満面の笑みがあったからこそ、ブラン監督の苦渋の表情が色濃く際立つ。経験豊富な指揮官ですら、頭を悩ませ、何度も何度もスタッフ陣で話し合いながら決めたという選考に心を痛めたことが、短くも丁寧な言葉の中から伝わってくる。 “最強”と謳われ、世界ランキング2位まで上り詰めた男子バレー日本代表。ブラン監督が「すべてのプレーヤーがよいパフォーマンスを出すために重要で、オリンピックで活躍できる選手であり、全員が(これまで)活躍してくれた」と加えたように、五輪に出場する12名だけでなく、交代要員の富田や落選した小川、エバデダン ラリー、さらにはその場を目指して戦い続けてきたすべての選手が“最強ニッポン”をつくってきた選手であることを証明していた。 フィリピンラウンドに先立って行われた福岡ラウンドの最終日。スロベニアに3対1で勝利した後、大塚が述べたのは勝利したことの喜びだけでなく、ここまでたどり着いた嬉しさと、その陰に抱えてきた苦悩だった。 「正直に言うと、ここまでめちゃくちゃきつかったです。特に(福岡の前の)ブラジルラウンドが近づくにつれて、6対6のメンバーも固定される中、自分は入れずにいた。焦りもあったし、どこかで『外れるかもしれない』という覚悟もありました」 イタリアリーグのプレーオフ出場で合流が遅れた石川と高橋藍は、ブラジルラウンドに帯同しなかった。そのため、アウトサイドヒッターの4名の候補から2名をブラジルでの4戦でセレクトすることは事前に伝えられていた。 世界ランキングを維持、向上させるために負けられない試合であると同時に、大塚や富田を含めたアウトサイドヒッターの選手たちにとっては、最初の関門とも言うべき戦いでもあった。
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