クラブ愛と費用対効果のあいだ――ガンバ大阪のスポンサーとして
サポーターの熱量や発信力
『廃車王 大阪南店』がガンバ大阪とスポンサー契約を締結したのは2022年。競合他社がTVCMをはじめとする広告宣伝に力を入れ、少しずつシェアを拡大する中で、同社としてもBtoCの露出拡大を検討している時期だった。 そんなタイミングで打診を受けたのが、某プロスポーツチームからのスポンサー契約。何度かの説明を受けて、試合も観戦して、前向きに検討しつつあった中で「ちょっと待った!」と声を上げたのが田中だ。 「結構大きな金額だったので、ちゃんと比較した方がいいと思って、他のチームの資料を集めたんです。ガンバ、セレッソ、オリックス……もちろん私のイチ押しはガンバなので、他のチームの資料は必要ないんですけど(笑)、社長に正しく判断してもらおうと」 「(社長に対して)『ガンバがいいと思います。ガンバがいいと思います』と囁き続けました(笑)」という田中の作戦が功を奏したかは不明だが、最終的に社長が選んだチームはガンバ大阪だった。 「社長は一切スポーツには興味がないのでフェアに選んだと思います。決め手はサポーターの数や熱量だったと聞いています。弊社にはTVCMを流せるほどの広告宣伝予算はないので、言葉は悪いかもしれないですけど、ガンバサポーターの熱量や発信力を利用させてもらいたいという考えです」 この時から田中には本業の経理以外に『会社の露出拡大』のミッションが課されることになる。「スポーツニュースで映り込むことを狙って」スタジアムに設置でき広告看板はゴール裏の位置を選び、「冷蔵庫に貼って毎日見て欲しい」と配布するノベルティはマグネットにした。 しかし、費用対効果の面で社長の評価は「見合っていない」という厳しいものだ。 「うちは大企業ではないので、スポンサー活動の効果は厳しくチェックされます。社長がサポーターになってくれれば話は変わってくると思うんですが(笑)、難しい。毎年(社長が)『今年は更新しない』と言うんちゃうかなと不安です」 だからこそ、サポーターの声は田中にとって大きな励みになっている。 「SNSを見ていると、廃車王の事業規模でスポンサーを続ける大変さを理解いただいている方も多い印象があります。ファラオ(田中氏)がガンバサポーターであることが伝わっている効果もあるかもしれませんが、情報発信の部分で『応援してやろう』という気持ちが伝わってきて嬉しいです」 サポーターによる応援の形は実際の店舗まで及ぶことも。田中が「本当に心強く感じた」と語るのは昨シーズンのホーム開幕戦での出来事だ。 「福岡在住のガンバサポーターの方が『廃車を任せたい』と、ご自宅から8時間も運転して試合前に店舗を訪ねてくださいました。車にはガンバのステッカーも付いていましたね。パナスタへは会社(廃車王 大阪南店)の車でお客さんと一緒にサポータートークをしながら向かいました」 「1年でも長くスポンサーを続けること」を当面の目標として、田中の奮闘は続く。そして、その先には「まだ個人的な想いですけど」と前置きをした上で見据える夢がある。 「いつか廃車王の冠試合を開催したいんです。今はノベルティを1つ作る上でも社長を説得しているような状況ですが、スポンサー活動の効果を高めて、売上を上げて、スポンサーのカテゴリーもアップグレードして、堂々と社長に『冠試合をやることに決めました』と言えるようになりたいですね」 取材・文:玉利剛一(フットボリスタ編集部) 写真: きしもと泌尿器科クリニック, 廃車王 大阪南店 , AFLO
玉利剛一(フットボリスタ編集部)