今や「老眼」は治す時代に?眼科専門医・平松類「アメリカでは目薬も認可。ただし期待するほどのものでは…」
環境省が公開している「花粉症環境保健マニュアル2022」によると、約3人に1人がスギ花粉症と推定されるそう。そんな花粉症の症状の一つに目の痒みがありますが、「目を掻いてしまうと網膜剥離になりやすい」と話すのは、眼科専門医・医学博士の平松類先生。今回は平松先生に「目のトリセツ」について解説していただきました。先生いわく、「白内障の手術でも老眼を治すことができる」そうですが――。 【書影】人気の眼科専門医が教える目についての最新知識!平松類『名医が教える 新しい目のトリセツ』 * * * * * * * ◆老眼は目薬で治せる? 若い頃、メガネなしで過ごしていた人は、老眼鏡をつけるのを嫌がるようです。近視のメガネをしている人でも、老眼になっているのに遠近両用メガネにしないで、メガネをつけたり外したりしてがんばっている人もいます。 そういう人は、老眼を治す薬があったらいいなと思うのではないでしょうか。 実はアメリカでは老眼治療薬(点眼薬)が、FDA(米国食品医薬品局)で認可されています。 日本でも同じ薬が眼科で処方されているのですが、「老眼に効く目薬をください」といっても出してもらえません。 この目薬は、もともと緑内障の薬です。ですから日本人でも緑内障と診断されれば出してもらえる可能性があります。
◆ピンホール効果 実は緑内障の目薬を使うと、老眼が改善するのです。そのメカニズムは次のようになります。 眼科で検査を受けるとき、瞳を開く目薬を点された経験があると思います。強い光を当てても瞳が閉じないようにするためです。 これとは逆に、瞳を閉じる目薬もあります。すると角膜(黒目)と虹彩(茶目)の根元が交わる部分(隅角)から目の中を循環している水(房水)が流れるようになり、眼圧が下がります。 緑内障の治療薬は基本的に眼圧を下げる薬ですが、このタイプの目薬は瞳を閉じることによって、眼圧を下げるわけです。 針で開けた小さい穴をのぞいて見ると、焦点が広がるため、老眼の人は見やすくなります。これをピンホール効果といいます。 このタイプの緑内障の目薬を点すと、ピンホール効果が得られるため、老眼も改善するというわけです。 おそらく日本でも、将来的には老眼に処方されるようになるでしょう。ただしそれほど期待するほどのものではありません。現時点では、老眼の症状が今より少しよくなるといった程度です。根本的な解決にはならないのです。