メルセデスF1代表、フェラーリ移籍決心のハミルトンに残留説得せず「誰にでも賞味期限はある」と衰えを警戒
メルセデスのチーム代表を務めるトト・ウルフは、ルイス・ハミルトンに対してフェラーリに移籍せず現在のチームに留まるよう説得しなかったと明かし、F1ドライバーとしての“賞味期限”を心配していたと語った。 【動画】アイルトン・セナの”愛機”マクラーレン・ホンダMP4/5Bがインテルラゴスを駆ける。ドライバーはハミルトン 今年初め、ハミルトンはメルセデスの契約解除条項を発動し、2025年に向けてフェラーリへ移籍するということが公になる前にその意志をウルフ代表に伝えた。 ウルフ代表としても、ハミルトンから移籍を告げられる前に、フェラーリを追われることになったカルロス・サインツJr.の父サインツSr.からの電話を受け、F1で大きな騒動が起こることを予感していた。 ハミルトンとウルフ代表は、常に互いの友情について語ってきたが、ハミルトンが他チームへの移籍を決断したことで、ウルフ代表は“クビ”を宣告するような気まずい会話がやってくることを心配せずに済んだ。そして、ハミルトン移籍はポジティブなこともあるとウルフ代表は言う。 ウルフ代表は、マンチェスター・ユナイテッドのサー・アレックス・ファーガソン元監督や、マンチェスター・シティ現監督のペップ・グアルディオラが、次世代を担う選手でチームを再建する際、年長の選手に門戸を開いた例を挙げた。 ウルフ代表は新著『Inside Mercedes F1 : Life in the Fast Lane』の中で次のように語った。 「ルイスがいなくなるということが、私の考えの中にあったというのは確かだ」とウルフ代表は言う。 「私がただ理解できなかったのは、競争力があるかどうか分からないうちに、なぜ彼が他チームに移籍する(と決めた)のかということだ」 「また反応する時間もなかった。我々のパートナーに急遽電話をかける必要があった。そしてシャルル・ルクレール(フェラーリ)やランド・ノリス(マクラーレン)のように、数週間前に契約を結んでいたドライバーたちとの交渉のチャンスを逃したのかもしれない」 「しかし、この状況は気に入っている。このスポーツを最も象徴するドライバーに対して『この関係を止めたい』と伝える必要がないから助けになった」 メルセデスはハミルトンの後任として2025年から育成ドライバーの18歳、アンドレア・キミ・アントネッリを起用する。 「1年強の契約しか結ばなかったのには理由がある」 ウルフ代表は2023年にハミルトンと結んだ契約についてそう付け加えた。 「我々の認識の鋭さが非常に重要なスポーツであり、誰にでも賞味期限があると私は信じている」 「だから、次の世代に目を向ける必要がある。サッカーでも同じだ。サー・アレックス・ファーガソンやペップ・グアルディオラのような監督たち。彼らはトップスターのパフォーマンスを予測し、次の数年のためにチームを牽引する若手選手を連れてきた」 一方でウルフ代表は、ハミルトンとレッドブルのマックス・フェルスタッペンが死闘を繰り広げた2021年シーズンを振り返り、メルセデス陣営の視点からはハミルトンの8度目のタイトルが“奪われた”最終戦アブダビGPの結末について、未だに考えることがあると明かした。 著書についてHigh Performanceのインタビューを受けたウルフ代表はポッドキャストの中で、こう語った。 「毎週、このこと(2021年アブダビGP)について考える瞬間がある。ルイスは8度目の世界チャンピオンタイトルを獲得した史上最強のドライバーに相応しいはずだったから、主にそう考えている」 「あの年についてはずっと議論できる。マックスとルイスはチャンピオンに相応しかったと思う」 「あの年には色々なことがあり、マックスが失うべきではないポイントもあった。シルバーストンを見れば分かる。モンツァでの2台のクラッシュを見れば分かる。ふたりともチャンピオンに相応しい。でも、アブダビのあの日の午後は不公平だった」
Ben Hunt