もうすぐ消えてなくなる戦場体験をなんとか後世に残したい――「語らずして死ねるか!」約1800人の証言 #戦争の記憶
戦争体験をどう引き継ぐのか
戦争体験を次世代に引き継ぐとは、どういうことなのだろうか。 日本遺族会の元会長で自民党元幹事長の古賀誠さんは「前線での戦闘だけが戦場体験ではありません。日本には終戦直後、戦争で夫を亡くした女性が100万人超もいた。戦争で孤児になった子どもたちも数十万人。それら大勢の人々の体験もひっくるめて語り継ぐ必要がある」と言う。 「1940年生まれの私には、(福岡県の)大牟田空襲を故郷の瀬高町(現・みやま市)から見た記憶がある。空が真っ赤に燃え上がってね。しかし、それ以上に、戦後の辛酸を嘗め尽くした母の暮らしが心に残っています。私の父は戦死していますから、子どもたちを育てる母の苦労は並大抵ではなかった。そうしたことも含めて戦争の記憶としてきちんと伝えるべきだと思うんです」
東京大空襲・戦災資料センター館長で、一橋大学名誉教授の吉田裕さんは、次のように語った。 「僕は戦後生まれですが、父や母、学校の先生、地域の人、友だちの家族に戦争体験者が必ずいた世代です。戦争と地続きの世界を生きてきたので、戦争の継承にすんなり入っていけた。直接聞かなくても、地域に戦争の記憶があった。友だちの家に行くと仏壇に戦死した人の写真があった。そうしたなか、僕らは『どう継承するか』を議論してきたが、今は『なぜ継承しなければならないのか』となっている。自明の前提にしてきたことを自明の前提にできない。そういう意味でもう一回、戦後の歴史を洗い直し、戦争や軍隊を自分ごととして受け止めてもらうような工夫をしないといけない」
「体験者の話は教科書と違う」「もっといろいろな話を」
「戦場体験者と出会えるお話し会」の終了後、主催者の手元には、体験者の話に耳を傾けた人たちから数えきれないほどの声が届いた。そのなかの30代以下の声には、次のようなものがあった。 学校の授業では絶対に知ることのできない戦争の実態を少しずつ知ることができ、本当に良かった。日本で本当にあった悲惨な戦争の話を聞いて、絶対に自分には関係ないこととしてはいけないと思った(10代、女性) 聞いていて思わず身体に力が入ってしまうお話。もっといろいろ聞いてみたいと思わされた。教科書などよりもずっと心に残る(10代、男性) 教科書で歴史を学んでも内容が現代の社会とは別次元すぎて他人目線で戦争をとらえてしまう。当事者から実際に話を聞くことで、戦争は他人事ではないのだと自覚した(10代、女性)