パートナーの反対、結婚への疑問、働き詰めの毎日──産まない女性の「本音」 #性のギモン
「異次元の少子化対策」は、児童手当の拡充、子どもの医療費助成制度、子育て世帯の住宅支援など、「子育て支援」が主な内容だ。識者は「データに基づかず、国民受けしやすいものになっている」と指摘する。いまや女性の4人に1人は生涯で子どもを産まない。その本音はどこにあるのか、探った。(取材・文:岡本耀/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
産まないのは経済的な理由だけではない
2023年1月に岸田首相が打ち出した「異次元の少子化対策」。その具体的な内容が明らかになるにつれ、議論が巻き起こった。なぜ子どもを産まないのか、持たないのかについて経済的な理由を挙げ、「子どもは贅沢品」という声が聞かれる。 「出生動向基本調査」(国立社会保障・人口問題研究所)には、「理想の子ども数」を聞く項目がある。確かに、2021年の調査結果を見てみると、夫婦の「理想の子ども数」が3人以上で「予定数」が2人の場合、理想の子ども数を持たない理由は「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が59.3%で最も多い。 しかし、理想の子ども数が1人以上で予定が0人の場合は、「ほしいけれどもできないから」が61.5%で最も多くなる。次いで23.1%で「高年齢で生むのはいやだから」、その次が17.9%で「お金がかかりすぎるから」と「夫が望まないから」という結果だった。 経済的な理由だけではないことが見えてくる。「産まない理由」を知るために、女性たちに詳しく話を聞いてみた。
パートナーの反対。「少子化対策」に複雑な思い
大手企業に勤める現在50歳の横山サチさん(仮名)は、32歳のときに結婚したが30代で2度婦人科系の病気が見つかった。治癒後は契約社員から正社員になれるかもしれない時期で、夫の理解も得て仕事に打ち込んだ。正社員にはなれたが37歳のとき離婚。その後に付き合った人は、子どもが嫌いではないが、「今の日本の社会はどんどん悪くなっている。子どもの未来を考えたら無責任なことはできない」という考えだった。会社を経営していて、「政治や制度が今の時代に合っていない」とよく言っていた。子どもがほしい彼女は彼と別れた。彼は海外に移住した。 彼女が正社員になったとき、子どもがいる同僚の男性は、「正社員になって制度が使えるようになったから、さっさと子どもを産んで産休を取ったらいいじゃん」と言った。そのためにがんばったわけではない。これまで産めなかったのには理由がある。でも周囲はこういうふうに見ているのだと思った。 横山さんには一人で子どもを育てられる経済的な基盤はある。未婚の母を「かっこいい」と思う。だからその選択肢も考えてはみたが、無理だと思った。 「当たり前ですが、一人で産んで育てるのは簡単ではありません。SNSには未婚の母に対して『不倫の子?』などと父親を詮索する声も見られます。結婚せずに子どもを産んだ場合に使える制度はどれだけあるのだろうかと不安は尽きません。まず男女が結婚、そして出産という一つの道だけではないはずなのに、理解や制度が追いつかず選択の幅を狭めている気がします」 「少子化対策で子育て支援」などと聞くと、横山さんは「自分は産めなかった」と考えてしまう。 「『子どもたちの未来のために』と言われたら、自分に子どもがいなくても社会の一員として応援できる。でも今の打ち出し方では、産めない人は存在しないことになっていると感じます」