なぜ東京五輪代表の一山麻緒は周回コース&男子ペースメーカーの好条件でも日本記録を更新できなかったのか?
永山忠幸監督は「想定外の出来事が起きてしまい、練習メニューを修正・変更せざるを得なかった」と明かしている。一山は昨年12月4日の日本選手権1万mで日本歴代6位となる31分11秒56をマークするなど順調だった。しかし、本格的なマラソン練習に入っていた年末に体調を崩して、5日間ほどジョグもできない状態があったという。 「1カ月間という短い期間で準備をしてきたんですけど、ポイント練習が2回できずに、イメージが作れなかったのは非常に大きかったと思います。逆にいえば最後の3週間は凄い練習をして、よくここまで耐え抜いたなと思っています」(永山監督) 一山本人は言い訳をすることなく、「日本記録を更新できず期待に応えらなかった。日本記録のために練習してきたので悔しいです。サポートしてくれるワコールのみんなと喜びたかった」と声を震わせて涙ぐみ悔しさを噛みしめていた。 日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは、「日本記録を狙って走りましたが、残念ながら少し悔しい結果になりました。一山選手は大会記録でセカンド記録。前田選手は自己記録。東京五輪につながる走りができたんじゃないかなと思います。日本新でも1億円がないことで力がでなかったのかな。半分冗談ですけど」と話していた。 男子マラソンで1億円(日本新)が3度飛び出したこともあり、日本実業団連合の褒賞金が枯渇。ビッグマネーがなくなったことも、モチベーションに影響した部分があるかもしれない。 男子マラソンは2018年の東京マラソンで設楽悠太が16年ぶりに日本記録を塗り替えると、その後は大迫傑が二度も日本記録を更新。シューズの進化もあり、日本の男子マラソンは大幅にタイムが向上している。それは世界も同じで、エリウド・キプチョゲ(ケニア)が2018年のベルリンマラソンで2時間1分39秒の世界記録を樹立。翌年には非公認レースながら1時間59分40秒というタイムで42.195kmを走破している。