ヤクルトは「昭和×令和」で第二の山田哲人や村上宗隆を育成 猛練習&テクノロジー融合の壮絶メニュー
濱田太貴は「去年より振る量が多いですし、これまでで一番きついですね」と言った。今シーズンは出場10試合にとどまり、期待されているホームランは出なかった。 「もうちょっとコンタクトして強く振りたいので、今回の練習はそれにつながると実感しています。強く振りつつも、コンタクト率をあげられる練習だと思っています」 【昭和と令和のコンビネーション】 そして冒頭で触れたように、松山キャンプでは昭和風の猛練習の向こうに、令和のテクノロジーが顔をのぞかせていた。バッティング練習では、ラプソードやブラストといった機器を使い、選手の打球速度やスイングスピードなどを測定していた。 スタンドティーを使用した"置きティー"では、選手ごとに目標値が設定され、150キロと告げられた選手はその数値以上を60球クリアしないと終われない。平均打球速度を上げるのが狙いで、再現性にもつながっていくのだった。どの選手も60球をクリアする頃には、250球ほどを要していた。 アナリストの工藤大二郎氏は「昭和と令和のコンビネーションですね」と話した。 「選手たちは数値が目に見えるので、きついなかでも手を抜けない。計測器は、手を抜かさせないための役割も果たしています。始まった頃と比べると速度が出る選手も多くなっていますし、まだ波がありますが、そのなかで右肩上がりになっていければと思っています」 増田珠は、今季からヤクルトでプレー。一軍で52試合に出場し2本塁打を記録。「僕は数字系が好きなので」と、ソフトバンク時代から映像分析アプリをチェックしている。 「みんなの数字は見ますし目安にもなりますが、結局は自分の数値が上がっていくことが大事です。今シーズン戦って感じたことは、スイングスピードを速くしていかないと上を目指すのはきつくなるということでした。なので、今回のように振ることは大事だなと。 テクノロジーの面で打球速度を測りながらやるのもすごくいいですよね。『今のはよかった、悪かった』などの感覚だけでなく、実際に数字を見て『今の打球はよかったんだ』と納得できる。今回、数値は上がりましたが、疲労度も増しています(笑)。でも、この疲労がちゃんと抜けた時にどうなるのか。オフを経て、今やっていることが2月にすごく生きてくるんじゃないかと楽しみです」
髙津臣吾監督は第1クール最終日に「打撃コーチには、今回のキャンプではバットを振る量と強さをお願いしました」と話した。 「そのなかで、感覚だけでなく現実的な数字を見ながらやるのは選手もわかりやすいし、目標にもなるでしょうね。まだまだ青写真を描ける段階ではありませんが、いずれ彼らが中心になっていかないといけない。今のうちにしっかり鍛えて、将来的にひとりでもふたりでもレギュラーやチームを引っ張っていく存在の選手をつくっていかないといけないと思っています」 そうしてキャンプは第2クール、最終の第3クールへと入っていくのだが、選手たちは日ごとに強く、たくましくなっていくのだった。 つづく>>
島村誠也●文 text by Shimamura Seiya