ヤクルトは「昭和×令和」で第二の山田哲人や村上宗隆を育成 猛練習&テクノロジー融合の壮絶メニュー
岩田幸宏は7月に育成から支配下選手となると、プロ初本塁打を記録。10月の宮崎でのフェニックスリーグ期間中も早出練習を欠かさず、秋季キャンプでも早い時間から準備する姿が印象に残った。 「振ると聞いていたので、そのための準備はしてきました。30分振り続けろと言われたらできますし、自分のためにやるだけです。僕の課題は打つことなので、やらなあかんという気持ちだけです」 第1クール最終日、今年7月に火の国サラマンダーズから入団した中川拓真は、屋内練習場でのローテーションひと回り目で160キロを超える打球速度を計測。しかし次のメニューでは極端に動きが鈍くなり、スイングが大きく波打ち、限界を超えているように見えた。 それでも大松コーチは「はい、1、2、3......」とトスを止めない。その理由について、こう説明する。 「ふつうだったら、もうダメなのかで終わるけど、今回は逃げられない状況をつくり、『ちゃんと自分と向き合わないと、練習は終わらないよ』ということですね」 中川はなんとかメニューを消化したが、「もう無理です。東京に帰りたい」と弱音を吐いた。そんな中川に「これを乗り越えたら、何かつかめるかもしれないですし、そういう物語は記者にとってはうれしいことです」と話すと、「そうなんですか......」とポツリと語った。 「乗り越えたら記事にしてくれますか? じゃあ、それをひとつのモチベーションにして、"なにくそ魂"ですね」 大松コーチは「振る力がついても、それを試合でコントロールできなければ底上げにならない」と、その先を見据えたメニューをつくっていた。 大松コーチが後ろに下がりながら6球トスを上げ、選手は前にステップしながら振り抜くメニューがそれだった。このメニューは、たとえば指定された約35メートル先のポイントに何球連続で打ったら終了で、ゴロの打球は禁止で、ピッチャーの足元を想定したライナーの打球や、長打を狙った高いゾーン打球など、その都度、指示は変化していった。 「しんどいなかでも、きちんと打たないとその場所に打球はいきません。今日は難易度を上げ、もっと高いゾーンに5球連続としたのでなかなか終わらない。そうなると500から600スイングになるんですね(笑)」