なぜUSJにキティちゃんがいるの?
こうして、親子で楽しめる広大な複合型ファミリーエリア「ユニバーサル・ワンダーランド」は2012年に誕生した。確固たる“目的”のために、「映画だけの専門店」を捨て、「映画を軸にした、世界最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップ」へと、明確な舵を切ったのだ。森岡氏が成功を確信したのはオープン2週間前だという。1か月ほど前から客足が落ち始め、直前には来なくなった。それがオープンとともに堰を切ったように人が訪れた。“行き控え”は期待の裏返しであることを、森岡氏は知っていた。 その後も「ユニバーサル・ワンダーランド」の集客は、年々増加している。多くのチビッコたちをハッピーにしただけでなく、従業員の意識改革をし、充実度をも上げた。さらに「ユニバーサル・ワンダーランド」だけでなく、人気アニメ『ONE PIECE』や人気ゲーム『モンスターハンター』などの“世界最高ブランド”も取り入れ、昨年、年間入場者数1000万人を達成した。 USJが抱えている問題点を打破し、飛躍させる目的を達成するための戦略。そしてその戦略を遂行する上での戦術。決して偶然性には依存せず、合理的に確率を高める手法。それが「ユニバーサル・ワンダーランド」であり、オープンを目前に控える「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」であり、その他の様々なアトラクションであるのだ。 7月15日にオープンする“ハリー・ポッター”の効果は測り知れない。国内だけではなく、インバウンドの期待も高い。「世界と比べても、一番のクオリティーだと自負しています」(森岡氏)と日本人らしい技術力の高さに胸を張る。それだけでなく、ハローキティらキャラクターの認知度も上がり、それがブランド力アップにも繋がる。お互いにWin-Winの関係が構築でき、マーケットの共有ができる。その時には、もう誰も言わないはずだ。「なぜUSJにキティちゃんがいるの?」と。 (取材・文/土井麻由実) 森岡毅(もりおか・つよし) 1972年生まれ。神戸大学経営学部卒。96年、P&G入社。日本ヴィダルサスーン、北米パンテーンのブランドマネージャー、ヘアケアカテゴリー・アソシエイトマーケティングディレクター、ウエラジャパン副代表などを経て、2010年にユー・エス・ジェイ入社。12年より同社チーフ・マーケティング・オフィサー、執行役員、本部長。著書に『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』(角川書店)がある。