名字博士が紐解く「金子」のルーツ──舞台は平安後期の関東地方へ
金子(かねこ)
「金子」は地名由来の名字です。地図で探すと「金子」という地名は全国にいくつかありますが、名字のルーツとなったのは埼玉県入間市の地名とされています。 平安時代後期、関東地方西部には武蔵七党と呼ばれる武士団がありました。七党といいながら実際には9つほどあり、どの7つをもって「七党」というのかは決まっていません。 この七党中に村山党という武士団があります。桓武平氏の末裔が東京都西部の村山を本拠として活動していたもので、一族は多摩地区から埼玉県の西部にかけて広がっていました。 武蔵七党の一族は、住んでいた地名を名字として名乗りました。 村山党の中に、武蔵国入間郡金子郷(現在の埼玉県入間市金子)に住んでいた一族があり、彼らが名乗ったのが名字が「金子」なのです。源平合戦では源氏方に属して活躍し、源義経に従った金子十郎家忠は『平家物語』などにも登場しています。 こうした活躍から、鎌倉時代には各地に新しい領地をもらいました。 愛媛県新居浜市に金子という地名があります。ここには金子城があり、戦国時代に金子氏という有力な武士がいました。この金子氏も村山党金子氏の子孫と伝えられていて、どうやら自分の名字に合わせて地名を変えたようです。 こうして「金子」という名字と地名は各地に広がりました。
森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家 1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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