電車運転士は「おっしょはん」とともに 強い絆の師弟関係 昭和100年だヨ!全品集合 阪急電車編
秋といえば紅葉、紅葉といえば茶色系(マルーン)-と強引なこじつけだが、今月はマルーンカラーで親しまれる『阪急電車』を取り上げてみよう。どんどん大きくなる「大阪梅田駅」。近くの「阪急三番街」「阪急ファイブ」「ナビオ阪急」にもよく通った。阪急百貨店の「英国フェア」は60年も続いているという。そして忘れてほしくない「阪急ブレーブス」の栄光。《昭和》満載! 1回目は「はるかなる運転士への道」。キーワードは「おっしょはん」だ。 【写真】前方のスクリーンを見ながらの運転士の訓練。状況判断が試される ■駅員から始まる ♪運転手はきみだ 車掌はボクだ…と子供のころよく歌った。実は業界では「運転手」ではなく「運転士」が正しい呼び名。子供だった昭和の時代、電車の運転士や車掌は憧れの職業だった。どうすればなれるのだろう。昭和51年に阪急電鉄に入社し「統括駅長」までのぼりつめた稲野清さん(66)にその道のりを語ってもらった。 「すぐに運転士にはなれません。まず、駅での業務を行う営業スタッフ(駅員)の仕事を覚えるところからスタートです」 阪急京都線正雀駅に近接する「人材育成センター」と「教習所」から、その一歩を踏み出す。育成センターでは①社会人の心構え②接客の基本③券売機や精算機、改札機の操作④体の不自由な方の介助⑤コンピューターの操作などを学ぶ。 「研修の中で一番大事なことはなんだと思いますか?」と稲野さん。「お客さまの安全」と答えると、大きくうなずいた。 「そうです。その安全を守るためには大きな声を出すことが一番大事。躊躇(ちゅうちょ)せずに大声でお客さまを誘導する。そのためには普段から大声を出す訓練が必要。昔は運動場の端と端で叫びあったものです」 現在、運動場はないが、育成センターの入り口で「帽子よし!」「名札よし!」「服装よし!」と大声で指差し確認。指導係の「教室に入ってよし!」の許可をもらう。車両火災の発生を想定した訓練では「この電車はすぐには燃えません! 落ち着いて! 係員の指示に従ってください!」と叫ぶ練習をするという。 ■師弟関係は「一生」